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小さな小さな防衛戦
第1話 春風の中で  
パンチ 
パンチ   パンチ
Illustrated by Punch


 春風に乗って奴らはやってくる。
小さな小さな侵略者達が、その名は「花粉軍団」である。
人の体内めがけて侵入してくるのだ。
その数、10億とも100億とも言われている。

うっとうしい奴らである。  今日は、そよ風そよぐ気持ちがいい日である。
だが、体の中では大変な騒ぎになっていたのである。
「作戦本部に入電、未確認物体が接近中!!」人の中枢である脳に信号が送られてきた。
「各セクションのリーダーにつぐ、迎撃体制をとり待機せよ!!」

 「またこのときが訪れた。今年こそ占領してやるぞ。」
花粉軍団首領フンガがつぶやいていた。
「第一侵略部隊ギース侵攻開始!!!」一斉にそよ風の中に飛び出していった。
「穴という穴から侵入して粘膜にとりつき機能を停止させるのだ。」
まったく、過ごしやすくなってきたの困ったものだ。

 一方、人の体内では・・・・・
「鼻腔粘膜部隊ダストバスターズは、粘膜強化により迎撃に入れ!!」
「眼瞳涙腺部隊ダストウォッシャーズは、涙増量により迎撃に移れ!!」
万全の体制で奴らの攻撃に備えていた。

 ついに、侵攻部隊が攻撃をはじめてた。
奴らはまず鼻に攻撃を仕掛けてきた。
粘膜に取り付きくしゃみを誘発させてきたのである。
人は、たまった物じゃない、くしゃみの連発である。
「作戦本部よりダストバスターズへ、粘液により奴らを体外へ排出せよ。」
その指令によりダストバスターズは、一斉に迎撃体制に入った。
「全砲門一斉に粘液発射!!」
粘液により奴らを吸着して、次々に体外に排出されていった。
だが戦いは、日没とともに沈静化していった。
それにともない、くしゃみも落ち着いていった。

 次の日、また奴らの侵攻が開始された。
「クソォ〜〜、奴らもやりおるわい。第二侵攻部隊ヨギーモも侵攻に参加させる。
そして、二ヶ所を一斉に攻撃して攪乱するのだ。攻撃開始!!!!!!」
フンガの号令とともに一斉に侵攻部隊は飛び出していった。

 「緊急入電、フンガ侵攻部隊来襲!! 敵の数、昨日の倍以上!!
ダストバスターズは粘膜を強化させ待機、ダストウォッシャーズは涙増量により迎撃体制 に入れ!!」
まもなく、奴らがやってきた。

 まずに鼻に攻撃を仕掛けてきた。
ダストバスターズは、慣れたもので次々に粘液で取り込んで排出しはじめていた。
しかし、時間が経つにつれて粘膜の攻撃力が低下してきたのです。
奴らは、今のうちとばかりに一気に攻撃してダストバスターズの動きを封じていったのです。
かろうじて粘液を出すものの奴らの力に押されて威力が無くなってきたのです。
 勝機が見えてきたのか奴らは、眼にも攻撃をしてきました。
そうおいそれとやられるダストウォッシャーズではなかったのです。
「一斉放涙開始!!」命令が下るとともに反撃に出たのです。
奴らは、勢いよく外に洗い流されてしまいダストウォッシャーズの勝利でした。

 このような戦いが二ヶ月間続いたのです。
ある時はダストバスターズ達が優勢になり、またある時は花粉軍団の形勢逆転になる
シーソーの様に目まぐるしく変化したのです。
しかし、両者の軍勢の数もかなり減っていたのです。
人の体の方もかなり限界に達していました。
鼻の穴は、粘液により荒れてしまい。
眼は、真っ赤に充血してかゆみを催していのです。
そして、一番の被害を受けているのが作戦本部である脳だったのです。
花粉による連日の攻撃により思考能力がかなり低下して思う様に指揮が出来なくなっていたのです。

 ついにこの戦いも終結に向かって動き出したのです。
「作戦本部より・・・各セクションに連絡・・・奴らの数もかなり減少してきている
今日が最後の戦いになるかもしれない・・・気を引き締めて迎撃体制には入れ!!」
花粉の飛ぶ季節もあと少しで終わり初夏を迎えようとしていたから奴らの戦力もかなり低下してきていたのです。
万全ではないにしろ奴らの戦力を上回りつつあった迎撃部隊は一気に反撃に出たのです。
 ついに首領フンガは残っていた全ての戦力を投入して総攻撃を試みたのです。
こちらも負けじと最大限の力を振り絞り迎え撃ったのです。
フンガの部下達は次々に倒れ、フンガだけが取り残されてしまいました。
奴は、勝ち目がないことに気が付くと捨て台詞を残して風のように消えたのです。
「クソ〜〜今年も敗れてしまったが、来年こそは必ず征服してやる覚えてやがれ!!」
こちらの戦力も既に限界に達していたので追撃はしなかったのです。
結果的に勝利をおさめましたが、かなり苦戦を強いられました。
我々迎撃部隊は、来年も来るであろうフンガの襲来に備えて僅かな休息を得たのです。

 しかし、また如何なる侵略者が攻めてくるかもしれません。
本当の平穏な日々はいつになったら来るのでしょうか。

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