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☆ 流れ星 ☆    miko 
流れ星

わたるくんには、どうしてももう一度見てみたいものがありました。
それは、おばあちゃんの田舎でみた、夜の空を流れる流れ星した。
おばあちゃんの家から見える夜空は、
わたるくんの住んでいるところから見える夜空とは大違いで、
星が空一面に、まるで宝石箱のように輝いてるのです。
その星空をずーっと見ていると、運がいいときだけ
きらきらと光りながら空から降ってくる流れ星が見れるのです。

病気がちなわたるくんは、入院することがたびたびありました。
入院はをすると学校へ行くことも、もちろん友達とも遊ぶこともできません。
毎日、毎日退屈でしかたがありませんでした。
しかし、そんなわたるくんにもひとつだけ、楽しみがあったのです。

その日もわたるくんは、病院の消灯時間が過ぎてから看護婦さんの目を盗んで
そっとベットからすり抜け、病院の屋上へ来ていました。
おばあちゃんの田舎ほどじゃないけれど、ここでも晴れた日には
かなりの数の星がきらきらと輝いていました。
もちろん、わたるくんの目的は、流れ星をみること。
そして、その流れ星に願い事をかなえてもらうことです。
小さい頃お母さんから、流れ星に願い事をとなえると願いがかなうと
聞いていたのです。それがほんとうかどうか確かめてみたかったのです。

しかし、そう簡単に流れ星は見ることができませんでした。
この病院へ来てからは、まだ一度も見たことがなかったのです。
しばらく、屋上のベンチにに座って空を見上げていましたが、
あんまりベットを抜け出していると、見まわりにきた看護婦さんに
見つかってしまいます。
「今日も、だめかな・・・」
そろそろあきらめて、病室へ戻ろうとベンチから立ち上がったとたん、
サアッー!キラキラキラ・・・・
空の端から端へ、光りの筋が尾を引きながら流れていくではありませんか。
「あーっ!おねがい!」
わたるくんは、慌ててそう叫んでいました。
何日も何日も待ってやっとの思いでみた「流れ星」は
思っていたより長く、空をきらきら踊っているようでした。
しかし、考えている時間はありませんでした。
とっさにそう叫んでいたのです。

しばらく、ぼうぜんとたちつくしていましたが、
「なーんだ。願い事を言う暇がなかった。」
と、がっかりして帰ろうと思い、屋上の出入り口へ歩きだすと
急に目の前が、ピカーッ!と光ったのです。
あまりのまぶしさに、思わず両手でを顔をおおっていました。
「おい、そこのキミ。ちょっと、聞きたいのだが・・・」
光りの方からいきなり声がするので、わたるくんはびっくりしました。
そして、恐る恐る指の間からのぞいて見ると、
光に包まれた小さなおじさんが、何かを探しているように、
まわりをキョロキョロしているではありませんか。

そのおじさんはよく見ると三角の帽子をかぶり、光る杖をもった変なおじさんでした。
はじめは恐かったわたるくんでしたが、不思議と恐くはなくなっていました。
「きみかい?今わしを呼んだのは?」
「えっ?ぼくは呼んでなんかいないよ。おじさんは、いったいだれなの?」
と、わたるくんは聞いてみました。
「わしは、流れ星の使いのものじゃ。きみは流れ星にむかって願い事を言っただろう。
だから、わしがやってきたのさ。しかし、きみの願い事はなんじゃったかなあ。
最近、ものわすれがひどくて、わすれてしまったんじゃ。」
わたるくんは、黙ってしまいました。
“おねがい”とは言ったものの、かんじんのおねがいの中身を言ってなかったからです。
「わしことを信用できないのかね。では、しょうこを見せてあげよう。」
そうおじさんが言うと、ひらりを空へ舞い上がり、光る杖を空中で一回転させました。
すると、空にあったはずの星がいっせいに流れ星となって空を踊り始めました。
それはそれはきれいで、わたるくんはその様子にしばらく見とれてしまいした。

「どうだ。わしは、星を自由にあやつることができるのじゃ。
これで、信用できただろう。で、願い事は、なんだっけ?」
わたるくんは、ほんとのことを言おうかどうしようか悩みましたが、
うそをつくのはやっぱりいけないと思い正直に言うことにしました。
わたるくんが正直に話すと、おじさんは、
「そうか。それなら、仕方なのないことじゃ。では、さようなら・・・・
と言って、本来なら帰るところだが・・・・・実はの。」
おじさんは、ちょっとニヤッと笑って見せました。
「今日は、わしの千回目の仕事なんじゃ。今日は、おおめにみてやるぞ。
それに、正直に答えたものよろしい。きみの願い事をいってごらん。」
わたるくんは、うれしくなりました。
あんなにもう一度見たかった流れ星を見ることが出来たうえにに、
願い事までかなえてくれるなんて。

「ぼ、ぼく、もう、入院なんかしなくてもいい、丈夫な体が欲しいんだ。
みんなと一緒に遊んだり走ったり出来る体が欲しい!」
「そうか。それなら、簡単だ。今夜は千回記念だ。ぱーっといこう。
ついでに、流れ星まで案内しよう。」
そういうと、おじさんはわたるくんの手をつかんで空へ舞い上がりました。
わたるくんの体もふわりと舞い上がりました。
そして、どんどん夜の空を上っていったのです。

「わーっ!すごいぞ。病院があんなに小さく見える!」
どんどん、町や森が小さくなっていったかと思うと、
きらきら光るもののそばに近づいてきました。
「よーし、しっかりつかまっているんだよ」
おじさんはわたるくんをきらきら光るものの上にのせて、光る杖をひとふりしました。
すると、ものすごいスピードでそれは動きはじめました。
ジェットコースターのように、ビュンビュン速く星空を駆け巡って行きました。
ほんとうは、遊園地の乗り物はあんまり好きじゃありません。
でも、不思議と恐くはありませんでした。
光った乗り物は、一通り空を回ると今度は地上へ向けて
スピードを増しました。
「このままじゃ、ぶつかるよ。おじさん、たすけてー!」
もう、だめだーというところで、
わたるくんはベットの上で目が覚めました。

「夢?だったのかな・・・・?」
まだ、心臓はどきどきしていました。でも、光る乗り物も光る杖をもった
おじさんも、もうどこにもいません。
やっぱり、夢だったのか。そう思うとなんだか、急に悲しくなってきました。

それから数日がたって、わたるくんは病院の先生がビックリするほど、
急に元気になっていきました。
そして、退院する日がやってきました。
これで、学校へも行けるし友達とも遊べる、そう思うとうれしくて仕方がありません。
やっぱり、あの流れ星のおじさんは夢なんかではなく、
ほんとうにわたるくんの願いをかなえてくれたんです。

しかし、それ以来流れ星を見つけてもおじさんには会うことは2度とありませんでした。

      
−−−完−−−


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