22.小さな援軍
「フルート! ポチ! ゼンー!」
そんな声が空から聞こえてきました。
かわいらしい女の子の声です。
雲の切れ間から差し込む光の中、こちらに近づいてくる人影がありました。
風の犬にまたがり、赤い髪をなびかせ、黒い長い衣のすそをはためかせている女の子。あれは・・・
「ポポロ!!」
フルートとポチは歓声を上げました。
ポポロは天空の国に住む魔法使いの女の子。先の冒険では、フルートたちと一緒に魔王と戦って大活躍したのです。
ポポロを乗せている風の犬は、飼い犬のルルでした。
「ワンワン! ルルだ! 久しぶり!」
ポチが大喜びして言うと、ルルはすぐそのわきに来て、やっぱり大喜びして言いました。
「ワンワン! ポチ、また会えて嬉しいわ」
フルートはポポロに言いました。
「幽霊から助けてくれてありがとう。よくここがわかったね」
ポポロが興奮で頬を真っ赤にして、ニコニコしながら言いました。
「あたしたち、天空の城の魔法の鏡で、フルートたちの戦いを見ていたのよ。でも、みんながずっと海の中で戦っていたから、どうしても助けに来られなかったの。フルートとポチが海の上に出てくれたから、天空の国の王様があたしたちをここに送り出してくれたのよ。これをフルートに渡すように、っておっしゃって・・・はい、これ」
そう言ってポポロがフルートに差し出したのは、一本の太い剣でした。ほとんど飾りがなくて、柄の部分に星の模様があります。
「光の剣だ!!」
フルートは思わず叫びました。
前回魔王と戦ったとき、闇の生き物たちに絶大な効果があった、天空の国の魔法の剣です。
フルートが光の剣を抜くと、遠巻きにしていた幽霊たちが、なおいっそう後ろに下がりました。みんな、剣の威力を知っているのです。
「ありがとう、ポポロ。これでエレボスや魔王とまともに戦えるよ」
とフルートが礼と言ったとき――
ザバァァ・・・ッ!!
海中からゼンを乗せたマグロが飛び出してきて、大きくジャンプしました。
その後を追って魔王の乗るエレボスが飛び出し、マグロにかみつこうと大きな口を開けます。
「危ない!」
フルートは叫ぶと、エレボスに向かってまっしぐらに突進しました。
光の剣で切りつけると、エレボスは細い体をくねらせて剣をよけ・・・
バッシャーン!
水しぶきを上げて、また海中に潜っていきました。
「あ、ありがとよ。助かったぜ」
ゼンがはぁはぁ息を切らしながら言いました。
「あのエレボスのヤツ、蛇になってるだけあって執念深くてよ。なかなか振り切れなくて、苦労・・・」
そこまで言って、ゼンはぽかんと口を開けました。
フルートの後ろに、風の犬に乗ったポポロがいるのを見つけたのです。
「ポポロ! ポポロじゃねぇか!」
「うん。天空の国の王様の命令で届け物に来たのよ」
とポポロは笑顔で答えました。
「そうかー。おっ、よく見たら、それは光の剣! やったな、これで魔王なんかもう敵じゃないぞ!」
ゼンはそう叫ぶと、ひゃっほう! と歓声を上げました。
声に合わせて、マグロも大きくジャンプしました。
そこへ、海中から渦王が姿を現しました。
渦王は、フルートが持っている光の剣とポポロを見ると、うなずいて言いました。
「天空王どのが助けをよこしてくださったのだな。ありがたい。魔法使いのお嬢さん、名はなんという?」
「ポポロです」
「ポポロか。そなたには強力な守りの光がついて回っている。おかげで、魔王も光の中の我々には手を出せないでいるぞ」
そう言って、渦王は雲の切れ間からさしてくる金色の光を指し示しました。光は、ポポロを乗せたルルが移動するたびに、サーチライトのようにポポロたちを追いかけてきて、今はフルートやゼンたちまですっぽり包み込んでいました。
「この光は、天空の国の人たちが、力を合わせて送ってくれています。ここに来たのはあたしひとりだけど、天空の国では、たくさんの人たちがこの戦いを見守って、魔法で援護してくれているんです」
とポポロが言いました。
「ありがたいことだ」
渦王は何度もうなずきました。
「うん? つまりなんだ、この金色の光は天空の国からの魔法で、強力なバリアの役目をしているってわけか?」
とゼンは言うと、急に自分の胸当てに手を入れて、ごそごそと中を探りました。
「じゃ、ポポロ、頼みがある。これを俺たちが戻るまで持っていてくれねぇか?」
そう言ってゼンがそっと手渡してきたのは、緑の貝でした。
ポポロは手のひらに貝を受け取ると、ゼンに言いました。
「これがメールなのね? 魔王の魔法で貝に変えられちゃった・・・」
「知ってたのか。なら、話は早いな。俺が持っていると、魔王の魔法や攻撃に巻き込まれるかもしれねぇからさ。さっきも、海の中でもう少しで魔弾の直撃をくらうところだったんだ。頼む、絶対に怪我なんかさせねぇように、メールを守っててくれ」
「うん、わかった」
ポポロがうなずくと、ゼンはほっとした顔になり、威勢よくフルートに言いました。
「よぉし、それじゃ魔王のヤツをたたきのめしてやろうぜ!!」
そこで、フルートは光の剣を構え直すと、ポチに言いました。
「よし、行くよ! これが最後の決戦だ!」
「ワンワン! わかりました!」
ポチは元気に答えると、びゅーっと勢いよく守りの光の中から出ていきました。
ゼンも、マグロに乗って光の外に飛び出して行きました。
そこでは、たくさんの幽霊たちと、黒い水蛇に乗った魔王が待ちかまえています。
「勇敢な子どもたちだ」
渦王は感心してつぶやくと、フルートたちの後を追って光の外に出て行きました。
「みんな、がんばって・・・」
ポポロは緑の貝を握りしめたまま、祈るように言いました。
海では、いよいよ魔王との戦いが最後の局面を迎えようとしていました――
というところで、なんとか今日も予定通りアップできました。
戦いはいよいよクライマックス。このペースを崩さないでアップできれば、と思います。
(2003年10月15日)
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