「勇者フルートの冒険・3 〜謎の海の戦い〜」        

17.ナイフの魚

海王の城に入り込んだフルートとゼンとポチは、タコたちが教えてくれた扉をくぐって、魔王の後を追いました。
長い長い廊下が続いています。途中に階段はありません。海の生き物たちは泳いで進むので、階段は必要ないのです。かわりに、廊下はぐるぐると円を描きながら、上へ上へと続いていました。螺旋式の回廊になっていたのです。

廊下のところどころには部屋の入り口があり、ドアの代わりに、海草で織り上げた美しい布が垂らしてありました。
フルートたちはその前を駆け抜けていきましたが、ふいにポチが立ち止まりました。
「ワン! 敵です!」
とたんに、一つの部屋からどっと怪物が現れました。形は魚そっくりですが、大きな口には鋭い歯が並び、ひれや尾やウロコが刃物のように鋭く光っています。それが何十匹も。
「このぉ・・・!」
すぐさまゼンが光の矢をつがえて魚に向かって撃ちました。
ところが、矢は魚のウロコに当たると跳ね返されてしまったのです。
「なにぃ!?」
ゼンはびっくりしました。

フルートが炎の剣を構えながら言いました。
「これは魔王の魔法で怪物に変えられた海の生き物たちだよ。闇の生き物じゃないから光の矢が効かないんだ。・・・わっと!」
フルートは魚の怪物に勢いよく体当たりされて、とっさに剣で打ち返しました。
魚は全身堅いウロコに覆われていて、炎の剣でも切れません。

すると、魚たちがぶるっと身震いをしました。
とたんに、魚のウロコが体を離れて、小さなナイフのように飛んできました。
「わっ! 危ないっ!」
フルートはウロコを剣で打ち返しました。
「おっとっとっと・・・」
ゼンとポチはあわててウロコから逃げました。鋭いウロコが廊下の床に突き刺さります。

「ちきしょー。こいつら、全身刃物のナイフ魚だぜ! 矢も剣も効かないんじゃ、どうやって戦えばいいんだよ!?」
ゼンが怒ってわめきました。
「待って」
フルートがそれを押さえました。
「思い出せよ・・・天空の城で戦ったとき、風の犬たちは黒い石の首輪で魔王の言いなりになっていただろう。きっと、この魚たちも同じだよ。どこかに、魔王に操られているしるしがあるはずだ」
「しるし・・・?」

そこで、フルートとゼンとポチは目をこらして魚の体に「しるし」を探しました。
ナイフ魚は弾丸のように突進してきては、フルートたちに体当たりを食らわせようとします。まともに当たったら、鎧にだって穴が開きそうな勢いですが、フルートのダイヤモンドの盾の方が強度は上でした。ダイヤモンドの盾に当たった魚は、跳ね返されて、床の上に転がりました。
その魚の腹に、黒く輝く石が見えました。
「あった! 腹のところだ!」
フルートは声を上げて、炎の剣で石を突き刺しました。
とたんに石は砕けて、強い光を放ちました。
光が消えたとき、そこには、きょとんとした目をした1匹のフグがいました。魔王の魔法が解けて、元の姿に戻ったのです。

「よぉし、腹のところだな!」
ゼンはがぜん張り切ると、襲ってくるナイフ魚をよけながら、腹の石を狙って矢を撃ち始めました。・・ゼンの青龍刀は大きいので、小さな石を突き刺すのには向かなかったのです。
石が砕けると、ナイフ魚は光に包まれて、小さなフグに戻っていきました。
ポチが、我に返ったフグたちを集めて、安全なところへ逃がしてやりました。

やがて、すべての魚がフグに戻りました。
フルートとゼンとポチは顔を見合わせてうなづきました。
「これで戦い方が分かったね」
「ああ、魔王が魔法で作った闇の怪物には光の矢が効く」
「ワン。魔王の魔法で怪物にされた海の生き物たちは、黒い石を見つけて壊せば元に戻ります」
「よし、行こう!」
フルートはそう言うと、ゼンとポチと一緒に、炎の剣を手にまた回廊を走り始めました。

上へ上へ・・・魔王の後を追って、城の上の方へ・・・。


というところで、今日はここまで。
ふ〜、今日も間に合った。(笑)

(2003年10月5日)



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