「勇者フルートの冒険・3 〜謎の海の戦い〜」        

16.三つの扉

海王の城の入り口をくぐると、そこは広間になっていました。幸いなことに、敵の姿はありません。
向こうの壁に、同じような扉が3つ並んでいました。
そっくりの重い鉄の扉ですが、よく見ると、扉の表面に「1」「2」「3」という数字の札がついています。
さて、渦王を連れた魔王は、どの扉を行ったのでしょう。

「ポチ、わかるかい?」
とフルートは子犬のポチを振り返りました。においで魔王の行き先がわかるかな、と考えたのです。
でも、ポチはしょんぼりと頭を振りました。
「キュ〜ン、ダメです。ここは水の中だから、においが残らないんです」
「そうかぁ・・・」
フルートたちはため息をつきました。こうなれば、勘で進むしかなさそうです。

ところが、どの扉にしようかと考えていると、後ろからこんな声が聞こえてきました。
「なぞ、なぞ、なぞなぞなぞなぞ・・・なぞなぞなぞなぞ・・・」
フルートとポチは、ぱっと顔を輝かせて振り返りました。
その声は・・・!


いいえ、後ろにいたのは、いつか浜辺で助けてくれたカニたちではありませんでした。
白い岩を積み上げた壁の間から、たくさんのタコやイカやヒトデたちがはい出してくるところでした。
「なぞなぞ」というのは、タコたちが口々に言っている声だったのです。

「うわ! なんだ、こいつら! 魔王の手下か!?」
ゼンが驚いて青龍刀を抜こうとしたので、フルートたちはあわててそれを止めました。
「待って、ゼン。このタコたち、なぞなぞ、って言っているよ。きっと、ぼくたちの味方だよ」
すると、そのとおり! と言うように、タコやイカやヒトデたちがいっせいにうなづきました。
魔王は、自分の手下にならなかった海の生き物たちに、なぞなぞしか言えない魔法をかけていたのです。

フルートは、タコたちに身をかがめてたずねました。
「ねぇ、ぼくたちは一刻も早く魔王の後を追って、渦王を助け出さなくちゃならないんだ。君たち、魔王がどの扉を行ったか見ていなかったかい?」
「おいおい。そいつら、なぞなぞしか言えないんだろう?」
ゼンがあきれたように言いましたが、タコたちは、いっせいに海の中を移動し始めると、3つの扉にはい上がって行って、言いました。
「なぞなぞ、なぞなぞ。・・・1番の扉にはタコが3匹、イカが4匹、ヒトデが5匹。2番の扉にはタコが4匹、イカが5匹、ヒトデが3匹。3番の扉にはタコが5匹、イカが3匹、ヒトデが4匹。タコとイカとヒトデの足と腕が一番多い扉に、魔王のヤツは進んでいったよ。さあ、どの扉を行ったか?」

「え、え、え・・・?????」
ゼンは目を白黒させました。
「なんだ、これ。なぞなぞなのか?」
「うん、タコたちがなぞなぞでヒントを出してくれているんだよ。えーっと・・・タコの足は8本、イカの足は10本、ヒトデの腕は・・・5本あるんだね。ということは・・・」
フルートはしゃがみ込むと、砂の上に数字を書いて計算を始めました。

ゼンは、一つのドアにへばりついているタコやイカやヒトデの足や腕を、一本一本数え始めました。
「1,2,3,4、5、6・・・・・・あれ? わかんなくなったぞ。もう一度、ええと・・・1,2,3,4・・・あっ、こら! このイカ野郎! 動くんじゃねぇよ! ちきしょー、わかんなくなっちまったじゃないか。もう一度、最初からだ。えーっと、えーっと・・・」
どうやら、ゼンは算数が苦手のようです。
あなたは何番が正しいドアがわかったかな?


「わかったぞ!」
フルートが元気に叫んで立ち上がりました。
「足と腕の数が一番多いのは、2番の扉だ! 魔王はここを進んだんだ!」
「当たり、当たり、大当たりーーー!!!」
タコたちは口々に叫んで大喜びしました。
とたんに、2番の扉がひとりでに開きました。
「ありがとう! さあ、行こう!」
そう言って、フルートは先頭に立って扉をくぐっていきました。ポチがそれに続きます。

ゼンは頭をかきながらひとりごとを言いました。
「ちぇーっ。俺も、家に帰ったら、今度はもう少しまじめに勉強することにしよう・・・」
「なぞなぞ、なぞなぞ」
タコたちが口々に言いました。
それはまるで、「それがいい、それがいい」と言っているようでした。
「ちぇっ」
ゼンはまたつぶやくと、急いでフルートとポチの後を追いかけていきました。


というところで、今日はここまで。
今のところは順調だけど、次はいつアップできるかな〜。
がんばります。(^^ゞ

(2003年10月3日)



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