「勇者フルートの冒険・3 〜謎の海の戦い〜」        

15.海王の城

フルートとゼンとポチは、マグロの引く戦車に乗って、海の中を突き進んでいきました。
あまりマグロが速いので、景色が飛ぶように後ろに過ぎていきます。
耳元では水がごうごうとうなり続けています。
そして、それがぱたっと止んだとき、一行はもう、海王の城の前までやってきていました。

海王の城は、鋭い剣のような塔がいくつも集まってできていました。塔の中央に、ひときわ高くそびえる塔があって、その先端で、大きなダイヤモンドがきらきらと輝いています。
「あれは海の太陽と呼ばれる、魔法のダイヤモンドです。あそこから出たバリアが城全体を包んでいるので、入り口以外のところからは、城の中に入ることができません」
とマグロが教えてくれました。
「入り口はどこ?」
とフルートが聞くと、マグロは城の下の方をひれで示して見せました。
「一番下の階です。ただ、きっと門番がいるでしょうね」
「魔王の手下の門番だな」
とゼンが言って、自分の刀と弓矢を確かめました。どっちの武器で敵を倒そうかと考えているようでした。

すると、ポチが耳をぴくっと動かして言いました。
「何か近づいてきます! すごく大きなもの! 隠れて!」
そこで、マグロは大急ぎで近くの海草の茂みに飛び込みました。戦車もフルートたちも、背の高い海草に覆われて見えなくなりました。
そこへ、ゆっくりと現れたのは、巨大な黒い水蛇の背に乗った魔王でした。魔王は、石になった渦王を腕に抱えています。マグロがあまり速かったので、フルートたちは魔王たちよりも先に海王の城に到着していたのでした。

「よし、魔王を倒して渦王を取り返そうぜ!」
ゼンがすぐにも飛び出していこうとするので、フルートはあわててそれを押しとどめました。
「待った・・・今はまだ無理だよ。黒い大蛇がいる。あいつらが城の中に入ったら、ぼくらも城に忍び込むことにしよう」
「でも、のんびりしていたら渦王の力が魔王に奪われて、海があいつのものになっちまうじゃないか! それでいいのかよ!?」
「しーーーっ! 聞こえちゃうよ」
フルートはあわててゼンの口を押さえましたが、黒い水蛇が気配に気づいたようでした。黒い鎌首を持ち上げて、あたりをきょろきょろ見回し始めました。

「どうした、エレボス」
魔王が蛇に声をかけました。
フルートたちはあわてて頭を下げると、海草の茂みの奥深くに身を隠しました。
でも、魔王は気がついたようです。においをかぐように鼻をくんと動かすと、顔をしかめました。
「ふん、もう来おったか、子ネズミども。だが、今度こそわしの邪魔はさせんぞ。・・・エレボス! 奴らを食い殺せ!」
そう言われて、黒い水蛇がゆるゆるとこちらへ向かって動き始めました。
魔王は石になった渦王を抱えたまま、城の中へと入っていきます。

「くそ・・・どうする、フルート?」
ゼンが歯ぎしりしながら言いました。
フルートも歯を食いしばりながら必死で考えていました。
こちらの武器は、フルートが持つ炎の剣とノーマルソードと、ゼンが持つ光の矢と青龍刀だけです。水の中なので、ポチは風の犬に変身できません。マグロも、泳ぎはとても速いのですが、実際に戦う力はありません。
敵の黒い水蛇は、魔王の黒いドラゴンの化身。闇の生き物なので光の矢は効き目があるのでしょうが、それにしても、こちらの方が圧倒的に不利です。

すると、マグロが言いました。
「私がおとりになって、あの蛇を引きつけましょう。その間に皆さんは城の中に進入してください。・・・大丈夫、私は海で一番速い生き物ですよ。黒い蛇なんてすぐにまいて、皆さんの後を追いかけますから」
そして、マグロはフルートたちを戦車から降ろすと、海草の茂みから勢いよく飛び出していきました。
すぐ近くまで迫っていた蛇が、それに気がついて後を追い始めました。
マグロは、その鼻先をかすめるように泳ぎながら、フルートたちから離れていきました。
「マグロくん・・・」
フルートたちは心配そうにマグロを見送りました。
蛇が追いついて、マグロが引く戦車にかみつきました。戦車はあっという間にバラバラになって、海の底に落ちていきます。
でも、重い戦車がなくなったので、マグロはいっそう速く泳ぎ出し、蛇を引き連れたまま、たちまち彼方へ見えなくなっていきました。

フルートはぎゅっと唇をかむと、ゼンとポチに言いました。
「さ、行くぞ。城に入り込もう」
そして、2人と1匹は、海底にそびえる城に向かって、まっすぐ走り出しました。


「・・・いた!」
フルートが突然立ち止まって、近くの岩陰にゼンとポチを引っぱりこみました。
城の下の入り口の前に、大きな骸骨戦士が立っているのが見えたのです。骸骨戦士は両手に大きな刀を一本ずつ持っていました。
「あれは魔王が生み出した闇の怪物だ。きっと光の矢が効くと思う」
とフルートが言うと、ゼンは即座に飛び出していきました。
「そういうことなら俺に任せろ。それ!」
ゼンは矢筒から光の矢を取り出すと、走って近づきながら、骸骨戦士に撃ち込みました。
矢が2,3本刺さると、骸骨戦士は音もなく崩れて消えていってしまいました。

「ひょ〜、相変わらず闇の化け物には効くなぁ」
ゼンが光の矢を感心して見ていると、フルートが叫びながら飛び出してきました。
「危ない、ゼン!」
ゼンを頭から切ろうとしていた骸骨戦士の刀が、カキーンとフルートの炎の剣に打ち返されました。
骸骨戦士の刀が、自分で動いて攻撃してきたのです。しかも、2本も。
フルートは炎の剣で戦いました。
ゼンも、自分の青龍刀を抜いて、骸骨戦士の刀と戦います。
キン、キン、カキン!
刀と刀がぶつかり合う鋭い音が、海の中に響きます。
「えいっ!」
フルートは満身の力を込めて、刀をまっぷたつに切り捨てました。炎の剣は刀も切ることができたのです。
ゼンの方は、なかなか勝負が決まらないので、とうとう頭に来て自分の青龍刀を投げ捨てました。両手で骸骨戦士の刀に飛びつくと、そのまま勢いよく、海底の岩に刀をたたきつけます。
「でぇぇいっ!」
ガキーン・・・ボキッ!
ゼンと戦っていた刀も、岩に当たってまっぷたつに折れてしまい、あとはもう動かなくなりました。


これで番人はいなくなりました。
「さあ、急ごう」
フルートたちは入り口から城の中に入り込みました――。


というところで、なんとか今日もアップできました。
この続きも、できるだけ早く書いていこうと思います。
うぉ〜、がんばるぞ〜・・・!!

(2003年10月1日)



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