5.海の怪物
フルートとポチをのせた波の馬が、海の上を走っていきます。
ドドドドドド・・・水の上にひづめの音が響きます。
海は一面真っ青。でも、だんだんその色が濃い青に変わってきました。海が深くなってきたのです。
空も青く晴れ渡っています。時々、頭の上を鳥が飛んでいきます。
すると、一羽の鳥がさーっと舞い降りてきて、フルートたちと並んで飛び始めました。
「ニャア、ニャア! 猫のように鳴くけど猫じゃない、海にすむ鳥はなーんだ?」
またなぞなぞです。魔王の魔法でなぞなぞしか言えなくなっているのです。
フルートは一生懸命考えました。
あなたは、答えが分かったかな? ・・・そう、猫のように鳴く海にすむ鳥は、ウミネコです。カモメの仲間の鳥です。
でも、フルートたちは今まで海に来たことがなかったので、このなぞなぞは分かりませんでした。
「ごめん、分からないや」
と答えると、鳥は悲しそうな顔をして、またさーっと離れていってしまいました。
なぞなぞに答えられないと、その動物は行ってしまうみたいです。
「あーあ。ゼンを見かけなかったか聞きたかったのになぁ」
とフルートはつぶやきました。
なにか助けてもらいたければ、なぞなぞを当てなくちゃならないようでした。
しばらく行くと、今度はまた別の鳥がやってきました。
さっきのウミネコより小さくて、翼と腰に白い模様のある黒い鳥でした。
フルートたちはまた鳥の名前を聞かれるのかな、と心配しましたが、この鳥は違うなぞなぞを出してきました。
「大きい大きい、大きい生き物。海で一番大きくて、魚のようだけど魚じゃない、実は動物の仲間の生き物って、なーんだ。ヒント、頭から潮を吹きます」
「潮?」
フルートたちが不思議そうに聞き返すと、鳥が言いました。
「潮っていうのは、頭から噴水みたいに出てくる水のことだよ」
「えっ、頭から噴水を出す生き物がいるの!? それも、魚のようなのに魚じゃなくて、動物の仲間なの??」
フルートがびっくりしていると、ポチがワンワン、と鳴き出しました。
「わかった、わかった! ぼく、聞いたことがあります! 海には不思議な生き物がいて、魚みたいな恰好なのに実は動物の仲間。頭から噴水を出して海を泳ぎ回っているんだ、って」
「答えは?」
と鳥が聞きました。
「答えはたしか・・・そう、クジラだ!」
「大当たりー!」
鳥が翼を打ち合わせて言いました。
ちなみに、この白黒模様の羽根の鳥はウミツバメという鳥でした。
ウミツバメはさらに早口でこう言いました。
「クジラはクジラでも、頭はカバ、体はライオン、しっぽは魚。このクジラは、敵か味方か、どっちだ?」
ウミツバメが問題を言い終わらないうちに、行く手の海が盛り上がって、ザバァッと大きな生き物が現れました。
本当に、頭がカバ、体がライオン、しっぽが魚になっていて、小さな山くらいの大きさがあります。
「怪物クジラだ! ってことは・・・魔王がよこした敵だ!!」
フルートが叫ぶと、ウミツバメが言いました。
「当たり、当たり、大当たり!」
その声はまるで、「早く、早く逃げて!」と言っているようでした。
波の馬たちは、いっせいに走る方向を変えました。
バオオォーン・・・
怪物クジラが空に吠えました。
そして、いきなりガバッと大口を開けると、顔を海につけて水を吸い込み始めたのです。
ズオオオオーーーーッッッ・・・
ものすごい勢いで海水がクジラに吸い込まれていきます。
それと一緒に、波の馬たちもどんどん吸い寄せられていきます。
フルートたちもクジラの口に引き寄せられます。
そして・・・グアーッ・・・バクン!
とうとう、フルートたちの乗った波の馬は、お化けクジラに食べられてしまいました。
ウミツバメは小さな体でお化けクジラに体当たりしたり、つついたりしました。
残った波の馬たちも、クジラのまわりに群がって、クジラを蹴ったりかみついたりしました。
でも、クジラは口を開けません。
そのまま海の中深く潜っていってしまいました。
というところで、今日はここまで。
次は木曜日にアップの予定です。
(2003年9月9日)
|