20.帰宅
フルートたちが魔王を倒したので、その夜、天空の国の城ではお祝いの大パーティになりました。
みんな、魔王がいなくなったことを喜び、フルートたちに口々にお礼を言いました。
食べるとケーキの味がする鳥の丸焼きや、一口食べるたびに味が違うスープ、ふわふわ空に浮かぶパンなど、珍しくておいしいご馳走が次から次と運ばれてくるので、フルートたちはお腹がはち切れそうなくらい食べました。
ポポロのお父さんとお母さんも、パーティに呼ばれてきました。ふたりは魔法を使って、ひとっ飛びでお城までやってきました。魔王の首輪が消えたので、また魔法が使えるようになったのです。
ポポロと犬のルルは、お父さんとお母さんに会えたので大喜びでした。
それを見て、フルートとゼンは、自分のお父さんやお母さんのことを思い出しました。
フルートたちがなかなか帰ってこないので、きっと、心配していることでしょう。
そこで、フルートは天空の国の王様に言いました。
「王様、ぼくたち、そろそろ帰らなくちゃいけません。この光の剣は王様にお返しいたします」
「この光の矢も返すぜ」
とゼンも矢筒から光の矢を取り出しました。
不思議なことに、返すために取り出したら、光の矢はもう矢筒の中で増えたりはしませんでした。
王様は光の武器を受け取ると、家来に命じて、フルートのノーマルソードを持ってこさせました。
それから、フルートたちに金貨や宝石のごほうびを、どっさりくれました。
「これはわしたちからのささやかな感謝のしるしじゃ。本当に、そなたたちには感謝しておる。また天空の国に遊びに来るがよい。いつでも大歓迎するぞ」
それから、王様は城に集まっている全員に呼びかけました。
「さあ、では、この子たちを我々の力で下の世界まで無事に送るとしよう。皆のもの、手をつなぐのじゃ」
すぐに、城中の人たちが手をつないで、大きな輪を作りました。みんなの魔法の力で、フルートたちを下の世界に送り届けようというのです。フルートとゼンとポチは、その輪の中心に立ちました。
すると、輪の中からポポロが走り出てきて、フルートたちに言いました。
「フルート、ゼン、ポチ、本当にありがとう。みんなのおかげで、あたし、自分の家に帰ることができたわ。それに、この天空の国も救ってもらえた。本当にどうもありがとう」
そう言って、ポポロはフルートとゼンとポチに、チュッ、チュッ、チュッ、とキスをしていきました。
「えへへへへへ・・・」フルートたちはみんな照れて、頭をかいて笑いました。
「いつかまた会おうね!」
とポポロが輪に戻りながら言いました。
「うん、絶対に、また会おうね!」
とフルートたちも言いました。
天空の国の人たちは、手をつないだまま、呪文を唱えはじめました。
「レドモ、レドモ、レドモニジブ、レドモニイカセノタシ・・・」
ぐにゃりと、フルートたちのまわりで世界が曲がった感じがしました。
そして・・・
気がつくと、フルートとゼンとポチは、東の国の城の、王様の前に立っていました。
東の国の王様は、突然目の前にフルートたちが現れたのでびっくりしましたが、フルートたちの話を聞くと、大喜びしました。
これで、東の国の人たちも、風の犬に襲われる心配がなくなったのです。
東の国の王様は、またまたフルートたちにたくさんごほうびをくれて、立派な馬車でフルートたちを家まで送ってくれました。
馬車で東の国の道を通っていくと、たくさんの人たちが家々から出てきました。
みんな、フルートたちが風の犬や魔王を倒したことを知って、大喜びしていました。ありがとう、ありがとう、と口々に叫んで、フルートたちの馬車に手を振ります。
フルートたちが泊まっていた宿屋の町を通ると、宿屋の主人と一緒に、あの3人の泥棒たちも出てきて、フルートたちに手を振りました。
「フルートさーん、おかげであっしたちは、宿屋で働けることになりやしたー。これからは心を入れ替えて、真面目に働いていきやーす。ありがとうございましたー・・・!」
泥棒たちはそう言っていました。
フルートのお父さんとお母さんは、フルートたちが立派な馬車に乗って帰ってきたので、びっくり仰天。
馬車からたくさんのお金や宝石のごほうびが下ろされてくると、またまた目を丸くして驚きました。
馬車はその後、ゼンを送って、北の山の方へ出発していきました。
ゼンは馬車の窓から身を乗り出し、手を振りながら言いました。
「フルートー! そのうちにまた一緒に冒険しようなー!」
「うん、また行こうねー!」
フルートも手を振り返して言いました。
その夜、フルートとポチはお父さんとお母さんに、今回の冒険のことを話して聞かせました。
とてもとても長い話になったので、全部話し終わったときには、もう夜が明けようとしていました。
フルートはお父さんたちに「おやすみなさい」を言って自分の部屋に行くと、鎧兜を片づけて、剣を壁にかけました。
それから、ずっと首から下げていた金の石を外しました。
「あれっ?」
フルートはびっくりしました。
金の石が、また灰色のただの石に変わってしまっていたのです。
それを見て、ポチが言いました。
「冒険から帰ってきたから、石も眠っちゃったのかなぁ」
「うん、きっとそうだね。今度また冒険に出かけるまで、石はこんなふうに眠っているんだ」
そう言うと、フルートは、灰色になった金の石を、机の引き出しに大切にしまいました。
それから、フルートは寝間着に着替えました。
ポチはベッドの下にもぐり込んで、もう半分眠ってしまっています。
「おやすみ、ポチ」
フルートがベッドに入りながら言うと、
「おやすみぃ、フルートォ・・・」
眠そうな声でポチが答えました。
カーテンがしまった窓の向こうでは、明るい朝がやってくるところでした。
はい、というところで、「フルートの冒険2」は全部おしまい。
そう、ジ・エンド。めでたし、めでたしだよ。
それじゃ、寝ようね。おやすみなさーい。
・・・おーい、興奮して、いつまでも起きてるんじゃなーい。
もう寝なさいったら。おやすみなさい!
こらっ、もう寝るの!
寝なさい!!
・・・(以下略)
(2003年3月19日)
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