16.モグラの王様
フルート、ゼン、ポポロ、ポチの3人と1匹は、魔王のいる城をどんどん進んでいきました。
そのうちに、廊下の三つに分かれているところに出てしまいました。さあ、どの廊下を進んだらよいでしょう。
フルートたちが迷っていると、すぐ近くから、小さな声が聞こえてきました。
「真ん中の道を行くとゾンビが出てくる。左の道を行くとゴーストが出る。右の道を行くのがよかろう」
そう言って、廊下の曲がり角からちょこんと顔を出したのは、1匹の白いモグラでした。
さっきトンネルを掘ってくれたモグラたちより少し大きくて、頭に小さな金色の冠をかぶっています。
そう、モグラの王様だったのです。
モグラの王様は、フルートたちに向かって言いました。
「わしはこの城に長年住んでおる。わしについてくるが良い。一番安全な道に案内してやろう」
フルートたちはちょっと顔を見合わせました。このモグラの王様、信じても大丈夫かな?
でも、フルートはすぐににっこりしました。モグラの王様を信じることにしたのです。
「わかりました。それじゃ、道案内をお願いします」
そこで、モグラの王様は先頭に立って歩き始めました。
白いじゅうたんの廊下をちょこちょこちょこちょこ・・・と歩いていきます。
その後をフルートたちがついていきます。すたすたすた。
ちょこちょこちょこちょこ・・・
すたすたすた。
ちょこちょこちょこ・・・
すたすた。
ちょこちょこ・・・
す、すた・・・。
「あの〜、王様。もう少し早く歩けませんか?」
とフルートが聞きました。モグラは歩くのがあまり早くないので、フルートたちはつかえて、なかなか前に進めないのです。
「無理を言うでない。わしはモグラじゃ。足が短いのだから、早くは歩けんわい」
とモグラの王様。
そこで、フルートはポポロに言いました。
「ポポロ、モグラの王様を抱っこしてあげてくれるかい?」
「うん、わかった」
ポポロがモグラの王様を両手に抱き上げると、王様は大喜びしました。
「おお、これは楽ちんじゃ。しかも見晴らしがよい。それそれ、そこの角を右に曲がるんじゃ」
今度はモグラの王様の道案内で、どんどん進めるようになりました。
歩きながら、フルートはモグラの王様に聞きました。
「魔王はこの城のどこにいるんですか?」
「城の一番上の階の、王座の間じゃ」
とモグラの王様が答えました。
「ヤツはこの城から王とお后を追い出して、自分が王座を占領したのじゃ。城の中にはヤツの手下のアンデッドがうようよしておる。アンデッドと戦うには光の武器が必要じゃが、そなたたちは光の武器をもっておるのかな?」
「光の武器・・・」
フルートたちは、自分たちの持っている武器を見回しました。
「金の石なら、ありますけど。さっき、この石から光が出て、ガイコツ戦士を倒しました」
「おお。泉の長老の金の石か。確かにそれには光の守りの力がある。だが、ヤツらと戦うためにはそれだけでは不十分じゃ。他には?」
「フルートは炎の剣を持っているぜ。俺はエルフの弓矢を持っているし、ポポロは雷の杖を持ってる」
とゼンが言いました。
でも、モグラの王様は首を振りました。
「足りない足りない。もっと強力な光の武器が必要じゃ。よろしい。わしの言うとおりに進みなさい。そこの階段を下に降りるんじゃ。それからまっすぐどこまでも進んで・・・右に曲がって・・・」
モグラの王様の言うとおりに進んでいくと、やがて、廊下のはずれの小さな扉の前に出ました。
「ここの中じゃ」
と王様は言いました。
フルートは扉を開けようとしましたが、扉はびくともしません。鍵がかかっています。
すると、モグラの王様が言いました。
「その右の壁のでっぱりを押しなさい。そうそう、それじゃ」
言われるとおり、ゼンが壁の出っ張りを押すと、シュッと音がして、壁に小さな穴が開きました。
穴の中にスイッチがあります。
「それを押すんじゃ」
と王様に言われて、ゼンはスイッチを押しました。
とたんに、小さな扉がひとりでに開きました。
扉の奥の部屋に入ったとたん
「すっげぇー・・・!!!」
みんなはびっくり。
そこは武器庫でした。部屋中にいろいろな武器があります。
いろいろな大きさや形の剣、刀、弓矢、槍、クロスボウ、杖、鎧、兜、盾・・・他にも、たくさん。
そして、この部屋の中は白ではなく、いろいろな色であふれていました。
「ここは魔法の秘密部屋じゃ。魔王の魔力も、この部屋の魔法と色までは奪えなかったんじゃ。さあ、フルート、その壁にかかっている剣をとるがよい。それが光の剣じゃ」
そこで、フルートは背伸びをして、壁にかかっている剣をとりました。
飾りのほとんどない、まっすぐで幅の広い剣です。手に持つ柄(つか)の部分に星の模様がありました。
フルートは光の剣を振ってみました。軽くてとても使いやすい剣です。
フルートはすっかりそれが気に入って、それを背中に差しました。剣は2本までしか持てないので、ノーマルソードを代わりにその部屋に置いていくことにしました。
次にモグラの王様はゼンに言いました。
「ゼンはそこにある銀色の矢を取りなさい。それは光の矢じゃ。どんな邪悪な力もうち砕くことができるぞ」
ゼンはその矢を手に取りました。矢の先から矢羽のところまで、全部銀色に輝いています。
「でも、これ1本だけかい?」
とゼンは聞きました。
「うむ。光の矢はそれしかない」
とモグラの王様は残念そうに答えました。
「1本じゃ少ねぇよなぁ・・・」
ゼンは考え込んでいましたが、急にぱっと何かを思いつきました。
「そうだ! これをエルフの矢筒に入れたら、どうなる・・・?」
エルフの矢筒は、入れた矢が使っても使ってもなくならない、魔法の矢筒です。
試しにゼンは光の矢を矢筒に入れて、しゅっと抜き取ってみました。矢筒の中に光の矢がまだあります。それもシュッと抜き取ってみました。まだ光の矢が残っています。もう一度・・・
そんなふうにして、ゼンは光の矢を1本から20本くらいまで増やしてしまいました。
「なんとまぁ。よくもそんなことが思いつくものじゃ」
モグラの王様はすっかり感心しました。
「さあ、それでは魔王のいる王座の間へまいろう。こっちじゃ」
とモグラの王様が言いました。
けれども、フルートは答えました。
「いいえ。モグラの王様、あなたはここに残ったほうがいいです。あなたはとても小さいから、魔王との闘いになったら、巻き込まれて死んでしまうかもしれません。ここから先は、ぼくたちだけで行きます。道順だけを教えてください」
モグラの王様は、すぐには何も言えませんでした。
フルートたちの勇気に感動して、ことばが出なかったのです。
「・・・わかった。あとはそなたたちに任せよう。この廊下を突き当たりまで、どこまでもどこまでもまっすぐに行く。そうすると、らせん階段があるから、それを一番上まで登る。登り切った部屋を横切ると、次の部屋が、魔王のいる王座の間じゃ。だが、魔王は手強いぞ。気をつけるんじゃぞ」
そう言って、モグラの王様はフルートたちを見送ってくれました。
フルートはモグラの王様に手を振り返すと、廊下をどこまでもどこまでもまっすぐに歩いていきました。
というところで、今日はここまで。
ダメ。ここまでなの。続きはまた明日。
最終決戦までもう少しだからね。
うん、最終決戦は途中で終わりにしないで、最後まで話してあげるから。
それじゃ、今夜はこれで終わりね。おやすみなさい。
(2003年3月15日)
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