「勇者フルートの冒険・2 〜風の犬の戦い〜

15.魔王の城

さて、魔王を倒すため、城に向かって出発したフルートとゼンとポポロとポチ。
みんなの装備はこんなふうでした。
フルートは金色の魔法の鎧と兜、ダイヤモンドの盾、背中には炎の剣とノーマルソードを差しています。首から下げているのは魔法の金の石。
ゼンは青いサファイヤの胸当てと盾。エルフの弓。背中にはエルフの魔法の矢筒、腰にはショートソードを差しています。
ポポロは黒い長い服を着て、手首には守りの腕輪、手には雷の杖を持っています。
ポチは、風の犬に変身できる魔法の首輪をつけています。
そうして、みんなはどんどん歩いていって、次の日、お城に着きました。

城に近づくにつれて、白い霧が濃くなってきました。城もあたりの景色もよく見えません。
「なんだか気味が悪い・・・」
とポポロが言いました。
でも、ゼンは笑って言いました。
「これくらいの霧、どうってことないさ。メデューサがいた南の沼の霧の方が、この何十倍も暗くて気味が悪かったぜ。なっ、フルート、ポチ」
「うん。こっちは明るいもんね」
とフルートが言いました。
「ワンワン、そのとおり」
とポチも言いました。
それを聞いて、ポポロはなんだか少しだけ怖さが減ったような気がしました。


とうとう、城のすぐ前まで到着しました。
城は高い石の塀で囲まれていて、入り口の門には分厚い扉が閉まっています。
扉は、押しても引いてもびくともしません。
どこかに中に入れる入り口はないかな、とフルートたちは城のまわりを歩き始めました。

すると、少し行ったところで、小さな声に呼び止められました。
「もしもし、坊ちゃんたち。もしかしたら、勇者フルートと仲間の皆さんですか?」
フルートはびっくりして声のしたほうを見ました。
それは一匹の真っ白いモグラでした。
「はい、ぼくがフルートですけど」
とフルートが答えると、モグラは手をたたいて喜びました。
「あなたたちが魔王を倒しに来たことは、お使い鳥の知らせで聞いております。さ、今、中に入れてさしあげますからね。ちょっと待っていてくださいよ」

お使い鳥、というのは、お知らせやニュースを遠くにいる人たちのところまで届ける鳥のこと。
実は、フルートたちが出発したあと、ポポロのお父さんがこのお使い鳥をよこしていたの。「金色の石の勇者とその仲間たちが、魔王を倒しに城に行くので、手伝ってやってほしい」って手紙をつけてね。

白いモグラは、地面に向かって合図をしました。
「そーれっ、みんな、仕事にかかれー!」
とたんに、ザクザクザク・・・地面の中から音がして、たちまち地面にぽっかり穴が開きました。
穴の中にはたくさんのモグラたち。モグラたちが力を合わせて地面にトンネルを掘ったのです。
フルートたちはそのトンネルを通って、無事城の中庭に入ることができました。

「フルートさん、皆さん、がんばってくださいね。魔王を倒して、私たちを助けてください」
モグラたちがそう言って、みんなでフルートたちを見送ってくれました。
モグラは全部で百匹くらいいました。
フルートはモグラたちにお礼を言うと、中庭を進み始めました。


中庭は、城の外よりもっと静かで、濃い霧に包まれていました。
霧の向こうに、うっすらと城の建物が見えます。
入り口は扉が閉まっていましたが、わきに小さな入り口があって、扉が開きっぱなしになっていました。
フルートたちはそこからお城の中に入っていきました。

お城は、中も白一色でした。白いじゅうたんを敷いた廊下が、お城の奥までずっと続いています。
すると、廊下の奥から、ガチャガチャと音が聞こえてきました。
すぐにフルートたちは剣を抜き、弓をかまえて、戦闘態勢に入りました。
奥から走ってきたのはガイコツ戦士でした。動くガイコツたちが鎧兜を身につけて、剣を振り上げながら近づいてきます。
ゼンは矢を次々と撃ちました。フルートは近づいてきたガイコツを剣で斬り捨てました。
でも、ガイコツは骨だけでできているので、炎の剣で斬っても燃えませんでした。またすぐ再生して、立ち上がってきます。
いくら倒しても倒しても、また立ち上がって襲いかかってくるガイコツ戦士を見て、ゼンが言いました。
「ちっきしょー! こいつら、全然きりないぜ!」
それを聞いて、ポポロは雷の杖を振ろうとしました。
ポチは風の犬に変身して、ガイコツ戦士をやっつけようとしました。

ところが、そのとき、フルートが首から下げていた金色の石が、ぱーっとまぶしく輝き始めたのです。
透き通った金色の光が、ガイコツ戦士たちを照らします。
とたんに、ガイコツ戦士たちは溶けるようにくずれて、消えていってしまいました。
「すげぇ!」
フルートやゼンたちはびっくり。金色の石がまたひとつ、新しい力を発揮しました。

「よし、行こう」
フルートたちは城の奥に向かって、また進み始めました。


はい、と言うところで今夜はここまで。
続きはまた明日ね。

(2003年3月14日)



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