「勇者フルートの冒険・2 〜風の犬の戦い〜

14.天空の国

さて、フルートとゼンとポポロとポチは、どんどん空の階段を上っていきました。
途中、何度もモンスターが襲いかかってきました。
大きな虫の集団、鳥の怪物、空とぶスライムなんかも現れました。
でも、そのたびにポチは風の犬に変身して闘ったし、フルートとゼンも炎の剣やエルフの弓矢で敵を倒して、切り抜けました。
そして、とうとう、みんなは階段の一番上までたどりついたのです。


そこは雲の上の世界でした。
あたり一面真っ白。でも、足下には確かに地面がありました。ちょっとふわふわした感じです。
一面に白い花が咲き乱れ、向こうには白い森と白い山々が見えます。
「へーっ、雲の上にもちゃんとこんな世界があったんだ」
フルートとゼンは感心しました。

ところが、ポポロは心配そうにあたりを見回しました。
「おかしいわ。みんな、色がなくなってる」
「色がなくなってる?」
フルートたちは驚きました。
「だって、ここは雲の上だろう? みんな白くて当たり前なんじゃないのか?」
「ううん。違うの。本当は森はエメラルドみたいにきれいな緑色だし、お花だって、虹のようにいろんな色をしているのよ。こんなに何もかも真っ白になってるだなんて・・・やっぱり、天空の国に何かが起こってるんだわ。確かめなくちゃ。みんな、来て。あたしのおうちはこっちよ!」
そういうと、ポポロはまっすぐに走り始めました。フルートたちはあわててそれを追いかけました。


白い花畑を抜け、白い森を通り抜けると、やがて、小さな町が見えてきました。
「あそこ! あれがあたしの家よ!」
ポポロは嬉しそうに言うと、町の一番はずれに建っている、小さな白い家に飛び込みました。
「お父さん、お母さん、ただいま!」
家の中には、ポポロによく目をした男の人と、ポポロによく似た顔をした女の人がいました。ふたりとも赤い髪をして、白い服を着ています。ポポロのお父さんとお母さんです。

ふたりは、ポポロが帰ってきたのを見て大喜び。泣き笑いをしながら、ポポロをぎゅっと抱きしめました。
「よく無事だったね、ポポロ。おまえが羽衣のマントを忘れて出かけていったから、私もお父さんも、おまえが下の世界に落ちて、死んでしまったんだとばかり思っていたんだよ」
とポポロのお母さんが言いました。
「ううん。あたし、本当に下の世界に落ちたのよ。でも、地面にたたきつけられる前に、森の木に受け止められたの。白い石の丘のエルフが助けてくれたのよ。それからずっと、エルフのおじさんと暮らしていたんだけど、お友達があたしをここまでつれてきてくれたの」
そう言って、ポポロは家の外で待っていたフルートたちを呼びました。
家の中に入ってきたフルートとゼンとポチを見て、ポポロのお父さんとお母さんはまたびっくりしました。
「これはこれは・・・下界の人たちですね。よくここまで来られたものだ。いや、娘を連れてきて下さってありがとうございます。どうか、ゆっくりしていってください」
と、ポポロのお父さんが言いました。ポポロのお母さんは、さっそくみんなにおいしいおやつを作ってくれました。
雪のように真っ白い色をした、ドーナツでした。

それを見て、ポポロが言いました。
「この国はどうなっちゃってるの? どうして、みんな色がなくなっちゃってるの?」
すると、ポポロのお父さんたちは悲しそうな顔をしました。
「おまえがいなくなってから間もなく、この国に突然魔王が現れて、すべての色を奪っていってしまったんだ」
「魔王!?」
フルートたちはびっくりしました。
「そう、恐ろしい魔王だ。魔王は、この国の城を乗っ取って、いろいろなものをおかしくしてしまったんだよ」
「風の犬も?」
とポポロは聞きました。
「そう、風の犬もだ。あんなにおとなしかった風の犬たちが、魔王に操られて、下界へ行っては恐ろしいことをしているという」
それを聞いて、フルートはうなづきました。
「風の犬は、毎晩東の国の人たちを襲って、殺したり怪我をさせたりしています。だから、ぼくたちはこうして天空の国まで来たんです。どうしたら魔王を倒せるでしょうか?」

すると、ポポロのお父さんは、うーむとうなりました。
「ポポロ、おまえはまだ魔法が使えるかい?」
「うん。1日1回だけだけどね」
とポポロは答えました。
「そうか。父さんたちはもう、全然魔法が使えないんだよ。ほら、これのせいだ」
そう言って、ポポロのお父さんは自分の首にはまっている黒い輪を見せました。
お母さんの首にも同じような輪がはまっています。
「だから、お父さんたちには魔王を倒すことができない。でも、ポポロ、おまえとおまえのお友達なら、もしかしたらヤツを倒せるかもしれない。ちょっと待っていなさい」

そう言うと、ポポロのお父さんは家の一番奥の部屋から、何かを持ってきました。
それは、1本の木の杖でした。
何もかも真っ白い中で、この杖だけは、ちゃんと木の茶色をしていました。
「これは魔法の杖だ。家の奥の秘密の戸棚にしまっておいたから、これだけは色も魔法も奪われずにすんだ。ポポロ、これをおまえにやろう。これは雷の杖だ。これを振ると、敵に大きな雷が落ちる。ただし、3回だけだ。それ以上は使えない。上手に使って戦いなさい」
とポポロのお父さんは言いました。

「魔王のいる城は、どこにありますか?」
とフルートは聞きました。
「もう行くの? 今夜はうちに泊まっていったほうが・・・」
とポポロのお母さんが言いましたが、フルートはいいえ、と答えました。
「こうしている間にも、下の世界では誰かが風の犬に襲われているかもしれないんです。はやく魔王をやっつけなくては」
そこで、ポポロのお父さんとお母さんは家の外に出て、城のある方向を教えてくれました。

「それじゃ、行ってきます!」
フルートとゼンとポポロとポチは、ポポロのお父さんとお母さんに見送られて、魔王の城に向かって出発しました。


さあ、明日は魔王のいる城に着くからね。
今夜はここまで。
おやすみなさい。

(2003年3月13日)



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