「勇者フルートの冒険・2 〜風の犬の戦い〜

13.白い階段

フルートとゼンとポポロとポチは、天空の国に通じる扉をくぐって、白い階段を上り始めました。
階段は、青い空の中をどこまでもどこまでも上に続いています。
何段か上がったとき、後ろでキィィ・・・と音がして、扉がひとりでに閉まりました。
でも、みんなは気にせず、どんどん階段を上り続けました。
上へ向かって、どんどんどんどん、どんどんどんどん・・・

階段を上るのは大変です。だんだん息が切れて疲れてきたけれど、みんながんばって上り続けました。
上りながら、ゼンが言いました。
「よぉ。天空の国に行く途中でモンスターが出る、って書いてあっただろう? どんなモンスターなんだろうな?」
みんなは、う〜んと考え込みました。
空の階段に現れるモンスターだから、鳥に似た姿をしているのかな?

すると、そのとき、ゼンのすぐ近くになにか丸くて黒いものが飛んできました。
それは、ゼンの胸当てにどん! と当たると、そのまま飛びすぎていきました。
「うわったったっとぉ・・・」
よろよろとなったゼンは、階段から落ちそうになって、あわてて階段にしがみつきました。
階段には手すりがありません。落ちたら、そのまま空をまっ逆さまです。

「なんだ、なんだ?」
と空を見ると、丸くて黒いものが引き返してきました。
背中に羽が生えた一匹の黒い魚。空飛ぶ魚です!

空とぶ魚がまたゼンに体当たりしてきました。
ゼンは階段にしがみつくと、すぐに跳ね起きて、エルフの弓矢をかまえました。
「こんのやろぉ・・・」
バシュッ! 
ゼンが撃った矢が、みごと空とぶ魚に命中しました。
ひゅーっと魚は空を落ちていきました。

ところが、空とぶ魚は1匹じゃなかったのです。
何十匹もの空とぶ魚が飛んできて、階段の途中にいるフルートたちに次々と体当たりを始めました。
勢いよく飛んでくる魚は、まるで大砲の弾のようです。

フルートは炎の剣で魚を斬り落としていきました。
ゼンはエルフの弓矢で撃ち落とします。
「ワンワンワン!」ポチは自分とポポロに襲いかかってくる空とぶ魚に、飛びかかってかみつきました。

ところが、とびきり大きな一匹にポチがかみつこうとしたとき、ポチは大きくバランスを崩して、階段から外に飛び出してしまったのです。
「キャーン!」
ポチが鳴きながら空を落ちていきます。
「ポチーーーッ!!!」
フルートたちは階段にしがみついて叫びました。でも、だめです。もう手が届きません。
ポチはまっすぐに空の下の方へ落ちていきました。

すると。

ポチの首輪の緑の石が、急にパーッと輝き出しました。
緑の光がポチの体を包みます。
そして、その光が消えると、ポチは、頭が犬で体が長く透き通った、風の犬に変わっていたのです。
「ポチが風の犬になった!!」
フルートたちはびっくり。

前にポポロが話したこと、覚えているかな? 天空の国にいる風の犬は、もともとはとてもおとなしい犬だったんだよ。
ポチもそれと同じでね、姿は風の犬になったけれど、中身は優しいポチのままだったんだ。
それに、ポチは、自由自在に空が飛べるようになっていました。
ポチはひゅーっと飛んでUターンしてくると、階段に群がっている空とぶ魚を、次々にやっつけ始めました。
空を飛んでは、魚にガブッ! ガブッ! 次々とかみついて、倒していきます。
まもなく、空とぶ魚は1匹もいなくなってしまいました。

「すごーい、ポチ!」
「すごいすごい!!」
みんなは大喜びして誉めました。
ポポロは、嬉しくて嬉しくて、ぴょんぴょん跳びながら手を叩いたものだから、ツルッ! 足を滑らせて階段から落ちてしまいました。
「キャー・・・・・・!!」

でも、大丈夫。
ポチがひゅーんと飛んできて、背中にポポロを乗せて階段に連れ戻してくれました。
階段に着くと、ポチの体がみるみる縮んで、また元の子犬の姿に戻りました。
「へぇぇ、便利だなぁ」
とゼンが感心すると、ポポロが言いました。
「そういえば、あたし聞いたことがある。風の犬は、もともとは普通の犬なんだって。それに、風の国の犬は、みんなポチみたいな首輪をしているのよ。石の色は赤とか青とか黄色とか、いろいろなんだけど」
「ふぅん。じゃ、風の犬はみんな、首輪の力であの姿に変身しているのかな」
とフルートは言いました。

さあ、ポチが風の犬に変身できると分かったら、もう空のモンスターだって怖くない。
とにかく、どんどん上っていこう。
上へ、上へ。天空の国をめざして、上へ・・・・・・


というところで、今日はここまでね。
うん、ここで終わり。だって、ホントにここまでしか考えてなかったんだもの。
うんうん、明日までにはまた考えるからね。
だから、今日はここで、おやすみなさい。

(2003年3月12日)



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