11.東の国の城
つぎの日、フルートたちは宿屋の主人に城の場所を聞きました。
東の国の城は、宿屋からあまり遠くないところにありました。
そこで、フルートとゼンとポポロとポチは、さっそく城に出かけていきました。
城の入り口でフルートが
「金の石の勇者フルートです。王様に呼ばれてまいりました」
と言うと、お城の門番はすぐにみんなを中に入れてくれました。
城の奥から、フルートの家にお使いに来た男の人が走り出てきて、フルートの手を握りました。
「フルート殿! よくぞ来てくださった! 王がお待ちです。ささ、どうぞこちらへ・・・!」
それから、男の人はゼンやポポロたちを不思議そうな顔で見ました。
「こちらの皆様は・・・?」
「ぼくの仲間たちです。一緒に怪物退治を手伝ってくれます」
とフルートは答えました。
「おお、それはそれは」
男の人はゼンたちにも深々と頭を下げると、さっそくフルートたちを王様の部屋に連れていきました。
王様はフルートが来るのを今か今かと待っていましたが、フルートたちが部屋に入ってくると、玉座から立ち上がってかけよりました。
「おお、あなたが勇者フルートか。待ちかねておりましたぞ。どうか、この国を謎の殺人鬼から助けてください」
「犯人にはもう逢いました。風の犬、という怪物だそうです」
とフルートは答えました。
王様はびっくり。
「なんと! 勇者殿はもう逢われたのですか。そうか、怪物の仕業であったのですか。それで、勇者殿は?
勝たれましたか?」
「とどめは刺せませんでした。とても手強い敵です。ぼくの魔法の鎧でも、攻撃が防ぎきれませんでした」
と言って、フルートは鎧の背中に受けた傷を見せました。
王様はまた驚きました。
「おおっ、これはいけない。もっと防具を強化しなければ。幸い、我が城には腕の良い鍛冶屋がいる。それにやらせましょう。さ、こちらへ」
そう言って、王様は先に立ってフルートたちを城の地下に案内しました。
城の地下には鍛冶場があって、ひとりの小人のおじいさんが、ごうごうと燃える火を使って、トンテンカンテン、刀を打っていました。ノームという種族の小人で、ゼンよりもっと小さい、子どもの半分くらいの背丈です。王様はそのノームのおじいさんに、フルートたちの防具を強化してほしい、と言いました。
ノームは、じろりとフルートたちを見ると、フルートに近づいてきて言いました。
「ふん、この鎧はなかなかいいものだ。魔法の鎧だな。だが、わしに言わせりゃまだまだだ。わしの手にかかれば、今の何十倍も強くなるぞ。その兜と盾もだ」
次に、ノームはゼンの鋼の胸当てと盾を見て、ふん、と鼻を鳴らしました。
「こいつは全然だめだ。こんなもんが闘いの役に立つものか。さあ、さっさとそれを外してここにおいていけ。明日までに、わしが見違えるくらい強くしておいてやる」
言い方は乱暴でしたが、ノームのおじいさんは、なんだかとても楽しそうでした。
防具をとびきり強くできるのが、嬉しくてしかたないのです。
フルートたちは、ノームに言われたとおり、鎧や兜、胸当てや盾を全部外して預けました。
フルートたちが鍛冶場を出ると、扉の向こうから、威勢の良い音が響き始めました。トンテンカンテントンテンカン、トンテンカンテントンテンカン・・・
さっそく防具を鍛え始めたようです。
王様の部屋に戻りながら、王様は言いました。
「フルート殿。防具の強化が終わるまで、この城に泊まっていかれると良い。今夜はフルート殿たちを歓迎して、盛大なパーティを開きますぞ」
でも、フルートは首を横に振りました。
「いいえ。ぼくたちは一度、宿屋に戻ります。友だちが来ることになっているんです。また明日、防具を取りにお城にまいります」
フルートたちが宿屋に戻ると、3人の泥棒たちが戻っていて、フルートたちの帰りを待っていました。
「坊ちゃん方、おかえんなせぇ。すごい情報を仕入れてきましたぜ」
と、泥棒の一人が言いました。
泥棒たちは、他の泥棒仲間たちに、天空の国について聞きに行っていたのです。
「天空の国にどうやって行けるか、わかったの?」
とフルートは聞きました。
「わかりましたとも。なんと、この国の城の中に、天空の国に通じる扉があるらしいんでさ。でもって、その扉の場所は、王様だけがご存じなんだそうで」
「お城に!?」
フルートとゼンとポポロとポチは、いっせいに驚きました。
お城なら、今行って、帰ってきたばかりです。
「よし。明日、ぼくたちはお城に防具を取りに行くことになっているんだ。そのとき、王様に扉のことを聞いてみよう」
とフルートは言いました。
「それじゃ、とりあえず夕食にしようぜ。俺、腹がぺっこぺこだ!」
とゼンが言ったので、他のみんなのお腹も、急にぐーっと鳴り出しました。
フルートは宿屋の主人に頼んで、夕食を部屋に運んできてもらいました。ハーブをかけて焼いた鶏肉、野菜のスープ、パンにジュース。どれもおいしい料理ばかりでした。
フルートたちと3人の泥棒は、夕食をお腹いっぱい食べると、その夜はみんなで一緒に眠りました。
というところで、今日はここまでね。
明日になったら、お城に行こうね。防具もきっと強くなっているよ。
それじゃ、今夜はおやすみなさい。
(2003年3月10日)
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