「勇者フルートの冒険・2 〜風の犬の戦い〜

7.森の夜−2

夜の森の中を、フルートとゼンとポポロとポチは進んでいきました。
フルートとゼンは、手にたいまつを持っています。
どこかに、寝るのにちょうど良さそうな、安全な場所はないかな・・・。

すると、ポチが突然また身構えて、ウ〜ッとうなり始めました。
森の奥からガサガサと何かが近づいてくる音が聞こえてきます。
フルートとゼンはすぐに武器を構えました。
バキッ、ボキッ、ベキベキベキ・・・音は近づくにつれて大きくなってきました。木の枝が折れる音も聞こえます。かなり大きなもののようです。
と、森の木の間から、ぬっと巨人が姿をあらわしました。毛皮の衣を着て、トゲだらけの太いこん棒を持っています。
ボストロール?
いいえ、違います。この巨人の顔には、大きな目玉がひとつだけしかありません。
一つ目の巨人、サイクロップスでした。

サイクロップスは、フルートたちを見つけると、にやぁっ、と笑って言いました。
「こ〜れ〜は〜こ〜れ〜は〜。う〜まそうな〜ごちそうじゃ〜な〜いかぁ〜。ま〜ってろよぉ〜、チビ助どもぉ〜。い〜ま〜、ブチ殺して〜、くってやるから〜なぁ〜・・・」
そう言うなり、サイクロップスはこん棒を振り上げて、フルートたちに襲いかかってきました。
フルートたちはあわてて飛びのくと、近くの茂みの中に逃げ込みました。
サイクロップスは、あたりかまわずこん棒をふりまわして、そこらじゅうを片っ端からたたきまくっていました。危なくて、とても出ていけません。

すると、ポポロが小声で言いました。
「あたし、おじさんから聞いたことがある。サイクロップスの弱点は、あの目。あそこを攻撃すれば、きっとやっつけられる」
「目か。・・・よし」
フルートはうなづくと、ゼンに言いました。
「弓矢であいつの目を狙ってくれ。ぼくが剣で矢の先を切るから。そうしたら、すぐに矢を撃つんだ」
ゼンは不思議そうな顔をしました。
「矢の先を切るのか? ・・・よくわかんねぇけど、とにかくフルートの言うとおりにするぜ」

ゼンが弓矢でサイクロップスの目を狙うと、フルートが炎の剣で矢の先を切り落としました。
とたんに、ボウッと矢が燃え上がりました。
「あち、あち、あち!」
ゼンは悲鳴を上げながら、あわてて矢を撃ちました。 火の矢はまっすぐにサイクロップスめがけて飛んでいき、見事、サイクロップスの目玉に刺さりました。
「ぐあぉぉぉーーーーーっ!!!」
サイクロップスはものすごい悲鳴を上げると、目を押さえながら逃げ出していきました。
大事な一つ目に火傷を負ったんですから、もうフルートたちを食べるどころじゃありません。
そのまま、サイクロップスは二度と戻ってはきませんでした。

ああ、よかった。怖かった。
フルートたちがホッとしていると、地面に大きな革袋が落ちていました。
ゼンが開けてみると、中には金貨や銀貨、宝石、指輪などがザクザク入っていました。
それはサイクロップスの財布でした。あわてて逃げていくときに、落としていったのです。
「せっかくだ、いただいちまおうぜ」
とゼンが言うので、フルートはその財布をもらうことにしました。

あたりがだんだん明るくなってきました。
夜が明けてきたのです。
行く手の木々の間から、ぼんやり光が見えてきました。
どうやら、森の出口はもうすぐのようです。
フルートたちは光をめざして、また歩きだしました。


というところで、今夜はここまで。
続きはまた明日ね。
おやすみなさい。

(2003年3月6日)



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