6.森の夜−1
さて、国境の森をフルートとゼンとポポロとポチは、どんどん進んでいきました。
でも、森はとても大きいので、歩いても歩いても、なかなか抜け出すことができません。
とうとう夜になってしまいました。
薄暗い森の中は、完全に真っ暗になりました。
「このまま歩いていたら危険だから、今夜はここで野宿しよう」とフルートが言ったので、みんなはそこに止まりました。
薪を集めてたき火を起こします。
料理上手のゼンが、その上に鍋をかけて、水筒の水を入れて、持ってきた乾燥野菜や乾燥キノコや干し肉を煮て、おいしいスープを作ってくれました。スープとパンで夕ごはんです。
ゼンのスープはとてもおいしかったので、みんな何杯もおかわりをして、お腹いっぱい食べました。
その後、みんなは火の回りに横になりました。
フルートは暑さや寒さを感じない魔法の鎧を着ているので、そのまま寝ても平気ですが、ゼンやポポロは寒いので、それぞれマントや毛布をかけて寝ました。
火を見ながら、ゼンが言いました。
「夜中に怪物が来るかもしれないから、誰かは起きていて、火が消えないように薪をくべなくちゃな」
すると、フルートはにっこりしました。
「大丈夫、心配いらないよ。見ていてごらん」
そういいながら、フルートが炎の剣を火のそばに置くと、ゴゴゴーッ! とたき火が勢い良く燃え上がりました。
ゼンとポポロはびっくり。
「うわっ、ななな、なんだ? 薪もくべてないのに急に火が大きくなったぞ!?」
「フルート、あなたって、やっぱり魔法使い・・・」
フルートは笑いながらポポロに言いました。
「魔法使いなのは君だろう。これは炎の剣だから、こうしておくと近くの火が勢い良く燃え出すんだ。ずーっと燃え続けるから、薪をくべなくても大丈夫だよ」
これなら本当に安心。そこで、みんなは横になって、火の回りで寝ました。
ごうごうと燃えるたき火に、火が嫌いな獣や怪物たちはまったく近寄ってきませんでした。
ところが・・・怪物たちの中には、火が好きなものたちもいたんです。
真夜中に、森の中からガサガサガサガサ・・・という音が聞こえてきました。
遠くから近づいてきます。
真っ先にポチが目を覚まして吠えました。
「ワンワンワン! 何かが近づいてきますよ! ワンワンワン・・・!」
フルートとゼンも、はっと目を覚まして飛び起きました。
それぞれに、炎の剣と弓矢を構えます。
と、森の奥から、わーっとなにかが煙のように押し寄せてきました。
蛾(が)です。
羽を広げると4,50センチもあるような巨大な蛾が、何百匹も、たき火めがけて飛んできたのです。
蛾は、明るいものが大好きです。
明るく燃えている火を見つけて、いっせいに押し寄せてきたのです。
蛾の羽から毒の粉がまき散らされて、あたり一面に充満しました。
それを吸ってしまうと、体がしびれて動けなくなります。
でも、フルートたちは平気でした。なぜか? フルートが持っている金の石が、みんなを守ってくれていたからです。
フルートは剣を振るって毒蛾を次々と斬りはらっていきました。
ゼンは最初、矢を撃っていたのですが、蛾があまりたくさんなので、面倒になってきました。燃えている薪を手に持つと、それをぶるんぶるんと振り回して、薪の火で蛾を落とし始めます。
それを見て、ポポロとポチも火のついた薪を振り回して、蛾を追い払いました。・・・ポチは口に薪をくわえてがんばったんだよ。
やがて、蛾は一匹もいなくなりました。
でも、地面は蛾の死骸でいっぱいです。
とてもこんなところでは眠れないので、みんなはもう少し先に行ってみることにしました。
夜の森の話はまだ続くのだけれど、ちょっと疲れたのでひと休み。
もっと読みたい人は、続きをどうぞ。
(2003年3月6日)
|