4.国境の森
白い石の丘を出発した、フルートとゼンと、女の子のポポロと、子犬のポチは、東の国をめざして野原をどんどん歩いていきました。
ところが、しばらくすると、ポポロがしゃがみ込んでしまいました。
「疲れたぁ。足が痛い。もう歩けないよぉ〜・・・」
フルートとゼンはすぐに引き返してきました。
「大丈夫かい?」
「大丈夫かよ?」
でも、ポポロはしゃがみ込んだまま、足が痛いとべそをかいていました。
どうやら、ポポロは今まであまり長い距離を歩いたことがなかったみたいです。
靴を脱がせてみると、足に大きなマメができて、それがつぶれていました。
マメっていうのはね、足のかかととかにできる水ぶくれなの。急にたくさん歩いたりするとできちゃって、つぶれるとすごく痛くて、よく歩けなくなるのよ。
これじゃ、ポポロは歩けそうにありません。困ったね。どうしましょう。
でもね、フルートはとても役に立つアイテムを持っていました。
どんな怪我でもすぐに治せるもの・・・
そう、金の石です。
フルートは鎧の下から金の石のペンダントを引き出すと、石の部分をポポロの足に当てました。
すると、見る見るうちにマメがつぶれて皮がむけたところが治っていきました。
たちまち元通り。もう痛くも何ともありません。
ポポロはびっくり。
「どうして? どうして、治っちゃったの? もしかして、フルートって、魔法使いなの?」
「ううん、違うよ。これは魔法の金の石なんだ。どんな怪我でもあっという間に治せちゃうんだよ」とフルートは笑って教えました。
ポポロは足が痛くなくなったので、また一緒に歩けるようになりました。
フルートたちは野原を3日間歩き続けました。寄り道せずに、まっすぐ東をめざします。
すると、4日目に大きな森にぶつかりました。
国境にある森です。東の国に行くのには、この森を抜けなくてはなりません。
でも、暗い森の中には必ずモンスターが棲んでいます。
フルートたちは油断なく身構えながら、森に入っていきました。
しばらく行くと、突然ポチが吠え始めました。
「ワンワンワン! 向こうから何かやってきますよ!」
フルートは炎の剣を抜き、ゼンは弓にエルフの矢をつがえました。
向こうの木の間からやってくるのは・・・透明なゼリーみたいで、ぶよぶよ、ぐにょぐにょしながら動いてくるもの・・・そう、スライムでした。
スライムは、まっすぐこちらに向かって近づいてきます。
「ぼくがやる」とフルートはみんなの前に出ました。
そして、迫ってくるスライムに向かって、剣を振り上げると・・・ズパッ!・・・一撃でまっぷたつにしました。
とたんに、ボゥッ!! スライムが火を噴いて燃え出しました。
それを見て、ポポロはまたびっくりしました。
「どうして? どうして燃えちゃったの? フルートって、もしかして、やっぱり魔法使い?」
「違うよ。これは炎の剣。これを使うと、切られたものが燃え出しちゃうんだ」
とフルートはまた説明しました。
「すごーい」ポポロはとても感心していました。
みんなはまた、森を進んでいきました。
するとまた、ポチが吠え出しました。
「ワンワンワン! また来ます! 今度はたくさんですよ!」
森の奥から、今度はたくさんの吸血コウモリが飛んできて、フルートたちに襲いかかってきました。
吸血コウモリは、普通のコウモリの倍以上も大きくて、人間の首にかみついて血を吸ってしまうモンスターです。
フルートは剣でコウモリを斬り払っていきました。
ゼンはエルフの矢で狙って撃ちました。・・・バシュッ! ドサッ!・・・ゼンの狙いは正確です。コウモリは矢に刺されて、空から地面に落ちました。ゼンはさらに他のコウモリも狙います。バシュッ! ドサッ! バシュッ! ドサッ!
ポチも自分やポポロに襲いかかってくるコウモリを、ジャンプしてかみついて、追い払っていました。
ポポロはガタガタ震えながら、頭を抱えてうずくまっていました。
やがて、吸血コウモリは一匹もいなくなりました。
地面にコウモリの死体がごろごろ転がっています。
それを見て、ポポロがとうとう泣き出してしまいました。「こわいよぉ〜。こわいよぉ〜。もうやだよぉ〜」
えーん、えーんと声を上げて泣き出してしまいました。
「ポポロ、もう大丈夫だから泣かないで」とフルートが言っても、「おい、もう泣くなってばよ」とゼンが言っても、全然泣きやみません。
でも、ポチがのびあがってポポロのほっぺたの涙をぺろぺろとなめて上げると、ようやくポポロは泣くのをやめました。
「大丈夫?」とフルートたちが聞くと、
「うん」とポポロはやっとうなづきました。
そんなふうにして、みんなはどんどん森を進んでいきました。
モンスターは次々に出てきます。お化けグマ、切り株お化け、大ミミズなんかも出てきましたが、そのたびに、フルートの剣とゼンの矢で倒していきました。
そのうちに、ゼンが不思議なことに気がつきました。
「あれっ? 矢が全然減ってねぇぞ?」
ここまで来る間に、もうずいぶんエルフの矢を使ってしまったはずなのに、矢筒にはやっぱり30本くらいの矢が入っているのです。
実は、この矢筒は魔法の矢筒でした。中の矢を使うと、使った分だけまた数が増えるのです。
これで、いくら矢を撃っても矢が足りなくなる心配はなくなりました。
「ひゃっほう! 俺、すげぇものもらっちゃったなぁ」とゼンは大喜びしました。
というところで、これも長いから2つにわけますね。
続きは第5章へどうぞ。
(2003年3月5日)
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