「勇者フルートの冒険・2 〜風の犬の戦い〜

3.白い石の丘のエルフ

フルートとゼンと子犬のポチは、3日歩いて白い石の丘に着きました。
丘の上に上がると、前と同じように、やっぱり誰もいません。
フルートたちは大きな声で呼びました。
「おーーい! 白い石の丘のエルフさーーーん!!」
すると、後ろから声がしました。
「よく来た、子どもたち」
振り向くと、エルフがそこにたっていました。長い銀の髪、緑の目、少しとがった耳、トーガという長いドレスのような服を着ています。

エルフはフルートたちに言いました。
「おまえたちが何故ここに来たのか、これからどこに行って何をしようとしているのか、私には分かっている。また大変な冒険になるだろう。まずは座りなさい」
そこで、フルートとゼンは白い石の上に腰を下ろしました。
エルフは言いました。
「東の国を邪悪な風が吹きめぐっている。そして、東の国の空には得体の知れない黒い影が棲みついている。影の正体は見えない。だが、それが邪悪な風を送りだし、国中の人々を苦しめているのだ」

そして、エルフはフルートに言いました。
「邪悪な風に普通の武器は効かない。おまえの炎の剣が役に立つだろう」
それから、エルフはゼンに言いました。
「そのエルフの弓はおまえにあげよう。きっとおまえの力になる。だが、矢がなくては弓は使えない。だから、これもおまえにあげよう。エルフの矢だ。前の銀の矢のような魔法の力はないが、エルフの矢は狙ったものによく当たるぞ」
そういって、エルフは矢筒ごと矢をゼンにくれました。矢は全部で30本くらいありました。
最後にエルフは緑の石のついた首輪を取り出して、ポチにつけてくれました。
「おまえにはこれを上げよう。きっとおまえを助けてくれるぞ」

それから、エルフは言いました。
「おまえたちには、もうひとつ、助けになるものをあげよう。・・・この子だ」
そういって、エルフは自分の後ろから一人の子どもを引き出しました。ずっと、エルフの後ろに隠れていたようです。
それは、フルートたちより小さな女の子でした。
髪は肩くらいまでの長さで赤毛。けっこうかわいい顔をしていて、黒い長い服を着ています。
その子は、何も言わずに、ぴょこんと頭を下げました。

フルートたちはびっくりしましたが、とにかく、あいさつしてみることにしました。
「こんにちは、え〜っと、ぼくはフルートです」
「俺はゼンだ」
「ワンワン、ぼくはポチです」

「君の名前はなんて言うの?」とフルートが聞くと、女の子は、小さな小さな声で答えました。
「ポポロ・・・」
「ポポロかぁ。ぼくたち、これから隣の東の国に悪い敵を倒しに行ってくるんだけど、君、大丈夫? 一緒に来られるかい?」
すると、女の子はまた、とても小さな声で答えました。
「おじさんが行きなさい、って言うから、一緒に行きます・・・」
どうやら、この子は白い石の丘のエルフの親戚みたいです。そういえば、耳の先もエルフらしく、ちょっととがっていました。
フルートたちは、この子、本当に大丈夫かな、と心配になりましたが、それは黙っておいて、「よろしくね」と言いました。

「もう日が暮れる。今日は私の家に泊まって行きなさい」とエルフが言って、自分の家にフルートたちを案内してくれました。
エルフの家は、白い石の下にありました。
魔法で隠してあったドアをくぐり抜けると、そこは白い石の部屋で、テーブルとソファがおいてあって、壁には綺麗な布がかかっていました。
部屋のなかにはどこからか、きれいな音楽も流れてきます。それは、部屋の隅にある竪琴が、ひとりでに音楽を鳴らしているのでした。
「すげぇ、魔法の竪琴だ〜」とゼンはびっくりしました。

エルフはみんなにたくさんご馳走を出してくれました。
いろいろな果物、パン、鶏肉、スープにサラダ、そしてお菓子・・・。
フルートたちはお腹いっぱい食べて、その晩はエルフの家の中で眠りました。
そして、つぎの朝、フルートとゼンとポポロとポチは、エルフに見送られて、元気に旅に出たのでした。


え? この後どうなるの、って?
もちろん、モンスターにあいますよ。
だって、モンスターが出てこなかったら、お話にならないじゃない。(笑)

さあ、それじゃ明日をまたお楽しみにね。
今夜はここまで。
おやすみなさい。

(2003年3月4日)



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