「勇者フルートの冒険・2 〜風の犬の戦い〜

2.旅立ち

その日の夕方、お父さんとお母さんが町から帰ってくると、フルートは東の国に行ってきます、と言いました。
「勇者をとめても無駄だからな」とお父さんは笑うと、お母さんと一緒に、フルートの旅のしたくを整えてくれました。
食べ物も薬も、たくさん準備してくれました。

次の日、フルートは自分の部屋で装備を整えました。
王様からもらった銀の鎧と銀の兜、背中には炎の剣とノーマルソード。その上に荷物のリュックサックを背負って、さらにそのうえに、鏡の盾をしばりつけました。・・・闘わないときには手に持っている必要はないもんね。


さあ、これで準備OK、と思って部屋を出ようとしたとき、不思議な音が聞こえてきました。
チリーンチリーン・・・鈴を鳴らすような音が、どこからか聞こえてきます。
フルートとポチは部屋をあちこち見回しました。

チリーンチリーン・・・また音がします。
ポチが気がつきました。
「ワンワン、ここです! フルートの机の引き出しから音がしていますよ!」
フルートは急いで引き出しをあけてみました。

チリーンチリーン・・・
鳴っていたのは、あの金の石のペンダントでした。
不思議なことに石がまた金色に戻っています。確かに灰色の石ころになっていたはずなのに・・・。
冒険に出るので、石もまた金色に戻ったみたいです。
「金の石も一緒に行きたがっているみたいだ」
とフルートは言って、金の石を首から下げると、鎧の内側に入れました。

さあ、これで本当に準備は整った。
フルートはお父さんとお母さんに行ってきますをいうと、元気に旅に出ていきました。


町を抜けて野原に出ると、ポチが急に鼻をくんくんさせて言いました。
「フルート、フルート! ぼくたちのよく知っている人が、あっちから来ますよ!」
子犬の言う方を見ると、遠くから近づいてくる人影がありました。
それは、ドワーフのゼンでした。
「ゼーン!!」
フルートは大喜びで走り出しました。
ゼンの方でも、フルートたちに気がついて、歓声を上げて走ってきました。
「おーっす、フルート! ポチ! 久しぶりぃ!」

「どうしたのさ、ゼン」
とフルートが聞くと、ゼンは答えました。
「メデューサを倒すのにエルフから借りた弓を返しに、白い石の丘に行くところだったんだ。ホントは返したくないんだけどな、父ちゃんが、借りたものは絶対に返さなくちゃいけない、って怒るからさぁ。ところで、フルートはどこに行くところなんだ?」
そこで、フルートは東の国の王様に呼ばれて旅に出たところだと教えました。

「よし、それじゃ俺も一緒に行く!」とゼンが言いました。
「また一緒に冒険しようぜ。・・・でも、その前にこの弓をエルフに返さなくちゃな。まず、白い石の丘に行ってもらっていいか?」
白い石の丘のエルフは物知りです。東の国の恐ろしい事件のことも、何か知っているかもしれません。
そこで、フルートとゼンとポチは、まず、エルフのすむ白い石の丘をめざすことにしました。


というわけで、フルートたちはまた新しい冒険に出たよ。
どんな敵が待ち受けているんだろうねー。
それじゃ、続きはまた明日ね。
おやすみなさい。

(2003年3月3日)



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