「勇者フルートの冒険」

11.決戦(続き)

奥から出てきた2匹のメデューサは、仲間が殺されているのを見ると怒り狂って、あたりを見回しました。
「どこだ! 侵入者はどこだ!!」
そう怒鳴りながら、太い蛇のしっぽで、どしんどしんと床を叩き鳴らします。


フルートは、またそっと鏡の盾を壁の後ろから差し出しました。
ちょうど一匹のメデューサがこちらを、もう一匹のメデューサが反対側を向いていました。
ゼンは2本目の銀の矢をつがえると、後ろ向きに鏡をのぞき込みながら、きりきりと弓を引き絞りました。
メデューサの額を狙って、矢を放ちます。バシュッ! ・・・カーン!!
残念! 矢は急所を外れて、跳ね返されてしまいました。

メデューサが気がついてこちらへ近づいてきました。
「ええい、後ろ向きじゃ当たるものも当たらねぇや!」
そういうなり、ゼンは最後の矢をつがえて、壁の後ろから飛び出しました。
メデューサの顔をしっかり見て、矢を放ちます。
とたんに、メデューサがゼンをかっとにらみつけました。たちまちゼンは石になって、固まってしまいました。
けれども、ゼンが撃った矢はまっすぐにメデューサめがけて跳んでいき、ザシュッ! みごと額の急所を打ち抜きました。
メデューサは悲鳴を上げ、地響きをたてて床に倒れると、そのまま死んでしまいました。


最後のメデューサが、フルートに気がついてこちらに向かってきました。
魔法の矢はもうありません。
フルートは壁の後ろで盾を構えなおすと、炎の剣を握りました。こうなったら、真っ正面から戦うしかない・・・!

すると、フルートより先に子犬のポチが飛び出していって、激しく鳴き出しました。
ワンワンワンワンワンワン・・・!!!!!
メデューサはうなり声を上げると、耳をふさいで立ち止まりました。
その隙に、ポチはフルートに言いました。
「早く! 姿消しの魔法の指輪をはめて戦うんですよ!」
そうか! それがあった!
フルートは急いでポケットから指輪を出して、指にはめました。
フルートの姿が見えなくなりました。

子犬はなおもワンワン鳴き続けていました。
ところが、メデューサが耳をふさぎながら、うるさい子犬をかっとにらみつけてきました。
「キャウン!」 ポチも石になってしまいました。


メデューサはずるずると近づいてきて、壁の後ろをぎろりとのぞき込みました。
ところが、そこには誰もいません。
フルートは姿を消したまま、そっとメデューサの後ろに回っていたのです。
きょろきょろと探し回っているメデューサのしっぽに、フルートは力いっぱい炎の剣を突き立てました。
カキーン!!
やっぱり剣はメデューサの体には刺さりませんでした。

メデューサが振り返ってきました。
しっぽに攻撃してきたのは誰かと、顔を近づけて確かめようとします。
フルートは鏡の盾でその様子を見ながら、炎の剣を構えなおしました。
メデューサの顔が近づいてきました。
口が耳元まで裂けた、身の毛もよだつような恐ろしい顔です。
顔がすぐそばまで来たとき、フルートは全身の力を込めて、炎の剣を額に突き立てました。
ギャアアアアーーーーーーッ!!!!!

メデューサは急所を刺されて、ものすごい悲鳴を上げて床に倒れました。
ボウッ! メデューサの体が火を噴きました。
すると、先に死んだ2匹のメデューサの体も、突然火に包まれたのです。
実はそれは最後のメデューサの分身だったのです。
本体が燃え始めたので、他の2匹も一緒に燃えだしたのでした。


3匹のメデューサは燃えて、最後に灰になりました。
すると、急に空が明るくなり始めました。
メデューサが死んだので、闇の霧が晴れ始めたのです。
黒い雲が切れ、間から太陽の光がさし始めました。
フルートのいる大広間にも、光がさし込んできました。


すると、
「あれ、俺どうしていたんだ?」と言って、ゼンが動き出しました。
石の姿から元に戻ったのです。
「ワンワンワン・・・あれっ?」 子犬のポチも元に戻りました。
「メデューサはどうなった?」とゼンたちが聞くので、「やっつけた。燃えていなくなったよ」とフルートは答えました。
ゼンとポチは大喜びしました。


さあ、メデューサたちはもういなくなったし、国をおおっていた闇の霧も消えてきました。
それじゃ、こんなところに長居は無用。お城に帰ろう。
フルートとゼンと子犬は、元気いっぱいで沼の中の神殿を後にしました。

目の前に広がる野原には、日の光がさんさんと降り注いでいます。
今まで日がささなくてつぼみのままだった花が、光を浴びて、いっせいに咲き出しています。
色とりどりの花におおわれた野原を、フルートたちはお城をめざして歩いていきました。



うん、メデューサを倒せて本当に良かったね。
でも、お話はもう一日あるんだ。
お城に戻って、王様に報告しなくちゃ。

明日が『フルートの大冒険』の最終回。
それじゃ、また明日ね。おやすみなさい。

(2003年2月5日)



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