「勇者フルートの冒険」

10.決戦

南の沼は、真っ黒な闇の霧に包まれて、本当に真夜中のように真っ暗でした。
その沼の中に、一本だけ道がありました。
フルートたちでは道を踏み間違えてしまうので、子犬のポチが一番先に立って歩き始めました。犬は暗いところでも目が見えるし、匂いで道が分かるからです。
闇の中に、子犬の小さな姿が白く見えています。フルートとゼンは、その姿を頼りに後をついていきました。
道を一歩間違えると、そこは底なしの沼です。ずぶずぶと沈んで二度と出てこられなくなるのですが、ポチのおかげで、二人は安全に進むことができました。

ところが、沼の真ん中に近づけば近づくほど、闇が濃くなって、とうとうポチの姿も見えなくなってしまいました。
フルートは、エルフのことばを思い出して、鎧の下から金の石の首飾りを引っぱり出しました。
すると、金の石から光が出てきて、子犬の姿を照らし出しました。おかげでみんなはまた前に進めるようになり、ついに沼の真ん中の島にたどり着くことができました。


島には、壊れかけた古い神殿がありました。
メデューサはきっとこの中にいるのでしょう。
「ポチ、ありがとう。今度はぼくが一番先に行くから、ポチは下がっておいで」とフルートが言って、先頭になって歩き出しました。それにゼンが続き、一番最後を子犬のポチがついていきました。

神殿の中は静かです。
ですが、奥へ奥へと進んでいくと、やがて、こんな音が聞こえてきました。
シュウシュウシュウ・・・ザラザラザラ・・・
蛇のシュウシュウいう声と、何かが地面の上をはいずり回るようなザラザラいう音。そう。メデューサがいるのに違いありません。
フルートたちはいっそう用心しながら奥へ進んでいって、とうとう、神殿の大広間の手前まで来ました。
シュウシュウ、ザラザラいう音は壁のすぐ向こう側から聞こえてきます。

フルートは気をつけながら、そーっと鏡の盾を大広間の入り口に差し出して、大広間の中を映してみました。
いました! メデューサです!
一匹の巨大なメデューサが、広間の真ん中で眠っていました。
体の上半分は人間、下半分は大蛇、頭は醜い女の顔、髪の毛は一本一本が毒蛇で、うごめきながら、口からシュウシュウと毒の息を吐き出しています。
でも、フルートたちは金の石に守られているので、蛇の毒の息にも平気でした。

「ゼン、魔法の矢であいつを撃ってくれ」とフルートが小さな声で言いました。
そこで、ゼンは背中からエルフの弓を下ろすと、魔法の矢を一本つがえました。フルートの構える鏡の盾を見ながら、後ろに向かって矢を引き絞り・・・「後ろ向きに撃つのは難しいぞ」とつぶやきながら・・・バシュッ! 矢を撃ちました。
グサッ! 見事、矢はメデューサの額を射抜きました。
ギャアアアア〜〜〜!!!!
メデューサは急所を打ち抜かれて、のたうち回って苦しみ、間もなく倒れて動かなくなりました。


メデューサが完全に動かなくなると、フルートたちはそろそろと近づいていきました。メデューサは、髪の毛の蛇の一匹一匹までが、ぐったりと倒れて動かなくなっていました。どうやら、本当に死んだようです。
フルートは念のためにとどめを刺そうとしました。
ところが、炎の剣でメデューサの首を切ろうとすると、カキーン! 剣が跳ね返されてしまったのです。
メデューサの堅い体は、炎の剣も受け付けません。急所は額の真ん中、一カ所だけ。そこを魔法の矢で打ち抜くしか、倒す方法はなかったのです。

でも、とにかくメデューサは倒されました。
良かった、これで闇を追い払うことができる、とフルートたちが喜んでいると。



ワンワンワンワンワン・・・!!!!!

突然、ポチが激しく鳴き出しました。
はっとしたフルートたちに、子犬が鳴きながら言いました。
「まだいます! あっちから、またやってきますよ!! ワンワンワンワン・・・!!!!」
本当に、大広間の奥の入り口のほうから、またシュウシュウ、ザラザラという音が聞こえてきました。
フルートとゼンは、あわててさっきの壁の陰に飛び込みました。
「おいで!」フルートは鳴いている子犬も抱きかかえて隠れました。

奥の入り口から、メデューサがまた現れました。続いて、もう1匹。
メデューサは全部で3匹いたのです。



さあ、どうなるだろうね〜。
この続きはまた明日・・・・・・

いたい、いたい! ちょっと、殴らないでよー!
ダメなの? 続きにしちゃダメ? 今すぐ続きが聞きたいの?
分かった分かった。じゃ、続きを話して上げるから、静かにお布団の中に入ってちょうだい。
それじゃ、続きを行きますよ・・・

(2003年2月5日)



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