「勇者フルートの冒険」

7.仲間

ドワーフの洞窟に灯りがついたので、その夜は宴会が開かれました。
洞窟の真ん中の大広間にたくさんのテーブルと椅子が運ばれてきて、そこにたくさんのご馳走が、所狭しと並びました。
鳥や獣の丸焼き、魚の唐揚げ、パイ、包み焼き、卵と野菜の煮込み料理、パン、シチュー、デザートのお菓子と、お酒とジュース・・・。
洞窟中のドワーフたちが集まってきて、食べたり飲んだり、しゃべったり歌ったり踊ったり。それはそれは賑やかです。
みんな、洞窟に光が戻ってきたのをとても喜んでいて、人面ヘビをやっつけてルビーを取り戻してくれたフルートに、口々にお礼を言いました。みんなから食べ物や飲み物を勧められて、フルートはお腹がいっぱいになって、はち切れそうなくらいでした。


すると、一段高いところにゼンのお父さんが立ち上がって、広間中のドワーフたちに大きな声で呼びかけました。
「聞いてくれ、皆のもの。・・・ここにいるフルートは、外の世界をおおっている謎の闇を追い払うため、旅に出ている勇者だ。この洞窟には、神のお告げを受けて、仲間を捜しに来たらしい。どうだろう、みんな。このフルートと一緒に外の世界へ行って、一緒に闇を追い払おうという者は誰かいないだろうか?」

とたんに、大広間はしーんと水を打ったように静まり返ってしまいました。
みんな、お互いに顔を見合わせたまま、首をひねっています。
ドワーフたちは外の世界に出ていくのがあまり好きではなかったし、闇の正体がなんなのか分からないのは怖い、とも思っているのでした。
その様子を見て、フルートは悲しい気持ちになってきました。


すると、広間の片隅から元気の良い声が上がりました。
「俺だ! 俺がフルートと一緒に行くよ!」
それはゼンでした。
「俺が行く! そして、闇のヤツをぶっ飛ばしてやるんだ!」
ゼンのお父さんは大きくうなづきました。
「よく言った、ゼン。フルートと力を合わせて、きっと闇を追い払うんだぞ」
そして、さっそくゼンに旅の支度をしてくれました。
毛皮の服に鋼の胸当て、鋼の盾、腰には短剣・・・背が低いので長い剣は振り回しにくいのね。それから、食料や薬草も、どっさり持たせてくれました。


みんなに見送られて、フルートとゼンは洞窟の外に出ました。
洞窟の中は明るかったけれど、外の世界は相変わらずの暗闇です。
「これからどっちへ行ったらいいかな」と思わずフルートがつぶやくと、ゼンがぽん、と手を打ちました。
「そういうことなら、西の森に行こうぜ。父ちゃんたちは、いつもどうしていいか分からなくなると、西の森に出かけていって、そこに住む物知りにいろいろ教えてもらって来るんだ。・・・俺は、物知りに会ったことはないんだけど、なぁに、行けばなんとかなるさ。な、行ってみよう」
フルートにしてみても、この後どうすればいいのか何も当てがなかったので、ゼンの言うとおり、西の森に行ってみることにしました。
雪と氷の平原を越えて、西の森をめざします。



さあ、それじゃ今夜はここまで。
続きはまた明日ね。

(2003年2月2日)



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