「勇者フルートの冒険」

2.金の石の勇者

フルートが泉から金の石を持ち帰ってから間もなく、フルートたちの住む国が突然闇におおわれてしまいました。
真っ黒な霧がどこからともなくわき起こってきて、国中をすっぽりと包み込んでしまったのです。
朝が来ても空に太陽は出てこないし、昼間でもろうそくやたいまつをつけなければ何も見えません。
国中の人たちは大騒ぎ。王様に「何とかしてください」と頼みました。

王様は神殿の神官に、神様のお告げを聞くようにと命じました。
神官は神様にお伺いを立て、こんなお告げを王様に伝えました。
『この国に、魔法の金の石を持つ勇者がいる。この石は、どんな怪我もたちどころになおしてしまう不思議な石だ。この金の石を持つ勇者なら、闇の原因を突きとめ、国から闇を追い払うであろう。』


そこで、王様は国中におふれを出しました。
『魔法の金の石を持つものは城に来て王に見せるように。本物であれば、たくさんのご褒美を与える。』
国中の人たちが、ご褒美を欲しくて、金の石を持って集まってきました。でも、どれも普通の金の石で、魔法の金の石ではありませんでした。なかには、ただの石を金色に塗って持ってくる人もいました。

王様はその人たちに言いました。
「魔法の金の石ならば、どんな怪我もたちどころに治すという。試しにその手を切って、怪我が治るかどうかやってみせるが良い」
これを聞くと、何人かの人はあわてて王様の前から逃げ出しました。
言われたとおり手を切って金の石を当ててみた人もいましたが、もちろん、魔法の石ではなかったので、怪我は治りませんでした。
とうとう最後にフルートの番になりました。
フルートは、別にご褒美は欲しくなかったのですが、お城の中の誰かが怪我をして困っているのかな、と思ったので、魔法の金の石を持ってお城にやってきていたのでした。


フルートを見るなり、王様が言いました。
「なんと、まだ子どもではないか。もうよい、もうよい。魔法の金の石の勇者は結局見つからなかったのだ。子どもよ、いいから、もう家に帰りなさい」
でも、フルートは鎖をつけてペンダントにした金の石を見せて言いました。
「これは本物の魔法の金の石です。王様、試してみてください」
あまりフルートが一生懸命言うので、とうとう王様も根負けして言いました。
「わかったわかった。衛兵、この子の手をちょっとだけ切ってやれ。・・・ちょっとだけで良いぞ」
そこで、衛兵も、気をつけてほんのちょっとだけ、フルートの手のひらを切りました。
細い傷ができて、赤い血が流れてきました。
フルートは少しもあわてずに金の石を傷に当てました。
すうっと血がなくなって、傷が消えていきました。
王様も居合わせた家来たちも、これを見てびっくり。
「本物の魔法の金の石だ! では、この子が金の石の勇者なのか!」


そこで王様は、フルートに向かって神様のお告げを教え、この国をおおっている闇の原因を突きとめて、闇をはらってくれないだろうか、と頼みました。
フルートは元気良く「いいですとも!」と答えましたが、すぐにちょっと困ったように言いました。
「でも、ぼくはどこに行って、何をすればいいんでしょうか?」
王様はすぐにまた、神官に命じて神様にお伺いを立てさせました。
すると、こんなお告げがありました。
『この町のはるか北のほうにある、山の麓の洞窟に行け。そこで、勇者は仲間を見いだすであろう』

そこで、フルートはさっそく北の山へ出かけることにしました。
王様はフルートのためにとびきりの装備をととのえてくれました。
鏡の盾と銀の鎧とそれに合った兜、そして、剣とお金と旅の荷物も準備してくれました。
銀の鎧は魔法の鎧で、それを着ると、フルートの体に合わせてしゅるしゅると縮んで、ぴったりの大きさになりました。とても軽くて、しかも暑さ寒さも感じなくなるのです。
鏡の盾はその名の通り、鏡のようにぴかぴかに磨き上げられた銀の盾でした。
剣はノーマルソードでしたが、とても良く切れる銘刀でした。
フルートはお城の王様たちに見送られて、元気に北に向かって旅立ちました。


さあ、旅に出たフルートは何に出会うだろうね。
続きはまた明日。

(2003年1月28日)



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