「白さんは、青さんがキースたちと一緒にいると言った」
北にいる青の魔法使いのところへ飛びながら、フルートは仲間たちに話しました。彼とポポロはポチに、ゼンとメールはルルに乗っています。
「キースたちって言うからには、きっとアリアンたちも一緒なんだ。さっきの光の爆発は、普通の人間のぼくたちまで焼き尽くすくらい強烈だった。デビルドラゴンを消滅させるくらいの光だったんだから当然だ。でも、それは闇の民のキースたちには──」
そこまで聞いて、仲間たちはフルートが心配していることをようやく理解しました。全員が青ざめます。
「おい、じゃなんだ。キースやアリアンたちまでが消えたとでも言うのか? ロキみてぇに……」
ゼンが唸るように言いました。北の大地の戦いでロキが友情の石の光の中に消えていったことを、全員が思い出します。
メールがあわてて言いました。
「そ、そんなの、まだわかんないじゃないか。キースたちのとこまで光が届かなかったかもしんないんだし」
「金の光はきっと世界中に届いたって、大司祭長は言ったんだよ」
とフルートは言って唇を強くかみました。仲間たちも何も言えなくなってしまいます。
やがてポポロが街道から少し離れた荒野を指さしました。
「いたわ! あそこよ!」
声に安堵の響きがあります。
地上にひとかたまりになった人影がありました。犬たちが急降下すると、人影は仁王立ちになった青の魔法使いと、地面にうずくまっているキースとアリアンになりました。キースはアリアンにかがみ込んでいます。
フルートたちは地上に飛び降りて駆けつけました。
「青さん、キース──!」
「大丈夫か!? 怪我したのか!?」
すると、アリアンの陰から二匹の小猿が飛び出してきて、キィキィ飛び跳ねました。
「ひひひ、光が襲ってきたんだゾ! せせせ、聖なる光だったんだゾ!」
「おおお、オレたち、光に焼かれて死んじゃうかと思ったんだヨ! 火傷してぼろぼろになって溶けそうになったんだヨ! だけど」
けれども、ゾとヨの体に傷はありませんでした。アリアンは顔や腕に火傷を負っていますが、キースが手をかざして傷を消しているところでした。
ただ、そんなキースの頭で角が小さくなっていました。頭の両脇にあったねじれた角が、真ん中あたりで折れていたのです。アリアンのほうも額にあった一本の角が根元近くで折れていました。いえ、折れたのではなく、聖なる光に消されたのです。その証拠に、キースがいくら魔法でアリアンを癒やしても、額の角だけは復活してきません。
「みんな、よく無事で」
とフルートは言いました。ほっとしすぎて、それ以上ことばを続けることができませんでした。
すると、キースたちがいっせいにフルートを見ました。ゾとヨはまたキーキーと飛び跳ねながら鳴きわめき、アリアンは、わっと声を上げて泣き出します。フルートたちが驚いていると、キースがアリアンをかかえるように抱いてつぶやきました。
「くそっ……」
それを聞いて、一行はその場にグーリーがいないことにようやく気がつきました。どこを見回しても、鷹も、鷲も、黒いグリフィンも見当たりません。
また顔色を変えた一行に、青の魔法使いが話しかけてきました。
「てっきり勇者殿が光になられたのかと思って焦ったのですが、セイロスがデビルドラゴンと共に燃えていったそうですな。白から聞きました。聖なる光はここまで強烈に届いてきたので、障壁を張ってキースたちを守ろうとしたのですが、光は内側まで入り込んできてキースたちを焼き始めました。私ひとりの力ではどうすることもできません。キースもアリアンもゾとヨも、苦しみながら溶けていこうとしたとき、グーリーが突然変身したのです。大きなグリフィンになって彼らの上におおいかぶさって──そして──」
一行は絶句しました。
ゾとヨはまだわめいて飛び跳ねていました。小さな脚で地団駄を踏みながら大粒の涙をぽろぽろこぼしています。
アリアンもまだむせび泣いていました。キースは彼女を抱きしめて歯を食いしばっています。
「フルート!」
ポポロが突然地面を指さしました。
それは大地に残された痕でした。周囲は高熱で焼かれたように地面も石も白くなっているのに、そこだけは色が違って、うっすら黒みを帯びていました。大地の本来の色が残っているのです。
その痕は翼を広げたグリフィンの形をしていました。キースとアリアンとゾとヨを包み込むように残っています。
「グーリー……」
フルートたちは呆然と立ちつくしてしまいました──。