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第27巻「絆たちの戦い」

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15.海の王・2

 「なるほど。それが噂の真相か」

 フルートの話を聞き終えて、海王が言いました。

 海と島を襲っていた嵐はすっかり収まり、青空からはまぶしい日の光が降り注いでいました。岩場や砂浜には白い波が打ち寄せては返し、沖で魚が跳びはねて銀の体を光らせています。

 海王の前にはフルートとポポロが立っていました。ポポロはもう泣いていませんでしたが、不安そうにうつむいたままでした。どんな話を聞かされても仲間だ、と海王は言いましたが、やっぱり心配だったのです。そんな彼女の肩をフルートは抱き続けています。

「なんてひどい話なんだ! 婚約者を二千年間も塔に縛り付けるなんて!」

「おまけにポポロの両親まで呪いで消そうとしたんだろう!? セイロスめ、許せないぞ!」

 一緒に話を聞いていたクリスとザフが、自分のことのように怒っていました。海の民は気持ちの移り変わりが早いので、先ほどポポロを疑ったことなど、すっかり忘れてしまっています。

 ペルラはポポロをのぞき込んで尋ねました。

「でも、ポポロはその時の記憶はないのね? 今も全然覚えていないの?」

 うん……とポポロはうなずきました。今にも泣き出しそうになっています。

 すると、ペルラはにっこりしました。

「良かったわね。そんなひどい記憶、今も覚えていたりしたら最悪だもの! そんな前世は記憶と一緒に捨てちゃいなさい。自分とは関係ないことよ、って!」

 いとこだからなのか、ペルラの言うことはメールの話によく似ていました。思わず顔を上げたポポロに、ペルラが片目をつぶって笑って見せます。

 

 海王がまた口を開きました。

「ポポロは、エスタ王を石像から解放するために、三度目の魔法を使ったと言ったな? 今はどうなのだ? やはり今までより回数多く魔法が使えるのか?」

「伯父上、ポポロはさっき目を覚ましたばかりなんだよ」

 とメールが言いましたが、ポポロは自分の両手を見つめて答えました。

「今日はまだ一度しか使っていないから、よくわかりませんが、たぶん今まで通り一日二回しか使えないと思います。そんな感覚があるから……。フルートたちと闇大陸に行ったときにも、あたしは三度目の魔法を使ったんですが、その後はやっぱり二回しか使えなくなりました」

 海王はうなずきました。

「自分の力の出所がわかっても、ちゃんとコントロールできているということだな。それならば、なんの心配もない。力に呑み込まれて支配されるようなことは起きないだろう。ご両親は、よほどしっかりおまえを育ててきたようだな」

 勇者の一行は、はっとしました。ポポロの両親は、力がありすぎて魔法のコントロールが悪かった娘を、厳しく、けれども愛情を込めて育て続けたのです。

 ポポロとルルが、石になった二人を思い出してまた涙をこぼします。

 

「だが、セイロスはそうは考えないだろう──」

 と重々しく言ったのは渦王でした。

「奴は自分の力が欠けていることを自覚していた。力を取り戻そうとポポロを狙うようになるのは間違いない。だから、わしは彼らをわしの島にかくまっていたのだ。わしの島であれば、セイロスにも見つけることはできないからな」

 海王はうなずきました。

「それも今となればよくわかった。だが、彼らはやはり人間たちの世界へ戻らなくてはならないだろう。そうでなければ、いつまでたっても彼らは誤解されて、孤立したままになる。とはいえ、人間は身勝手で薄情な種族だ。あの噂を聞いてもなお、彼らを信用してくれるような人間たちがいるかどうか、怪しいところだ。どうだ、そんな人間は思い当たるか?」

 どんなに外見が人間のようでも、海王は海の民です。そんなふうに聞かれて、勇者の一行は思わず顔を見合わせました。すぐに全員が笑顔に変わっていきます。

「いるよ、伯父上!」

「ああ、いるな──」

「ワン、あの人たちなら絶対に噂よりぼくたちを信じてくれます」

「きっと今頃心配してくれているわよ。ね、ポポロ、そう思うでしょう?」

 ルルが足元にすり寄ってそう言ったので、ポポロはうなずきました。一度止まっていた涙が、またあふれ出しています。

 フルートが海王と渦王に力を込めて言いました。

「ぼくたちは、ぼくたちを信じて待ってくれている人たちのところへ戻ります。そして、ぼくたちの疑惑を晴らして、セイロスと対決します」

 海の王たちはうなずき返しました。

「二千年前の戦いでは、闇の竜を幽閉するためにあらゆる種族が力を合わせて戦った。闇の竜を倒すとなれば、さらに大きな協力が必要になるだろう。むろん、我々も海の軍勢を率いて参戦する。だが、おまえたちと我々だけでは戦いに勝利することはできない。これまでおまえたちが出会い、関わりを結んできたすべての者たちと手を携え、共に戦う必要があるのだ」

「何しろ、我々は陸の戦いには参戦できないからな。だが、戦場が海になったときには、我々がすぐに駆けつけるぞ。闇の竜とセイロスにとことん思い知らせてやろう」

 海王は思慮深く、渦王は快活に言って、二人ともが笑いました。

 フルートはうなずき返すと、仲間たちを振り返りました。

「それじゃ、戻ろう! ぼくたちを信じてくれる人たちがいる──ロムド城に!」

「おう!!!」

 いっせいに返ってきた返事が、晴れ渡った空と海に明るく響きました。

2020年7月3日
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