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第26巻「飛竜部隊の戦い」

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エピローグ 潜伏

 ロムド国の東の国境の荒れ地に小さな森があり、森の外れに粗末な小屋が建っていました。

 木こりが仕事の際に泊まり込んでいた場所ですが、使われなくなって久しいので、小屋はすでにぼろぼろです。

 ここにディーラから姿をくらましたバム伯爵が潜んでいました。

 セイロスに忠誠を誓って従っていた伯爵ですが、ディーラでは飛竜を操って戦うことができなかったので、敵の猛攻撃から逃げ回るしかありませんでした。やがて、ロムド皇太子が率いるロムド軍が、あろうことか空飛ぶ馬で駆けつけてきたので、これはまずい、と考えて、いち早く戦場から逃げ出してしまったのです。

 彼は無事に逃げおおせることができましたが、他の飛竜や竜使いたちは誰も追いついてきませんでした。彼は、セイロスが率いていた飛竜部隊の、たったひとりの生き残りになってしまったのです。

 

 小屋の裏手には母屋に負けないほどおんぼろな厩(うまや)があって、伯爵が乗ってきた飛竜がつながれていました。伯爵は飼い葉桶に絞めたウサギや鶏を放り込み、飛竜がむさぼり食う様子にぼやきました。

「大飯ぐらいだな、まったく。私の持ち金は全部こいつの餌代に消えてしまって、私は毎日パンと水の生活だ」

 けれども、飛竜は空腹になると飼い主の彼を狙い始めるので、餌代をケチるわけにはいきませんでした。

 彼はため息をつきながら厩を離れ、また小屋に戻りました。古びた机で書きかけの書状を仕上げると、やっと満足そうな表情になってまたつぶやきます。

「これでよし。これで私にもきっと運が向いてくるだろう」

 書状を折りたたみ厳重に封をすると、また外に出て、小屋の前につないであった馬にまたがります。少し離れた町へ書状を託しに行こうというのです。

 

 バム伯爵は鞍の上から空を見上げました。冬の空は鈍色の雲におおわれ、寒々とした風を吹き下ろしてきます。

「あの男はどこかに姿を隠している」

 と伯爵はまたひとりごとを言い始めました。一人暮らしが長くなってきたので、自分を話し相手にする癖がつき始めていたのです。

「ということは、あのときに聞こえてきたのは、どうやら本当のことだったらしいな。ポポロという娘が闇の竜の力の一部を持っていたから、あの男は力不足でディーラにあのすごい破壊魔法を使えなかったんだ。そう考えれば合点(がてん)がいく」

 真相は微妙に違っていましたが、伯爵は自分の推理に自信を持っていました。さらにひとりごとを続けます。

「ということは、あの娘を捕まえて連れて行けば、あの男は完全に闇の竜の力を取り戻すということだ。今度こそ、あの男が世界の覇者になり、私はその右腕として重要な地位を占めるようになる。それが正解だ。だが──」

 伯爵の声が急に深刻になりました。手に持った書状を見つめてつぶやきます。

「私にはあの娘を捕まえるだけの力がない。だからこそ援軍が必要なのだ」

 書状の表にはエスタ国にいる知人の領主の名前が書かれていました。そして、その中には「ここへ転送するように」という書き付けと共に、ロムドの宿敵サータマン王に宛てた書状が潜ませてあったのでした。

 

 一面鈍色の空の果て、風に渦巻く雲の中で、冬の雷が低く鳴り響いていました──。

The End

(2019年9月20日初稿/2020年5月22日最終修正)

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