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第23巻「猿神グルの戦い」

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41.同行

 「そうか、ロムド城でそんなことが……」

 セシルからここまでのいきさつを聞かされて、フルートはそう言いました。そのまま口元に手を当てて考え込んでしまいます。

 彼らは話をするついでに軽い食事を取っていました。ゼンが全員に熱い黒茶を配りながら言います。

「ったく。ゾもヨもグーリーも軽率だぞ。サータマンにはセイロスがいるんだからよ、見つかってとっ捕まったら、ただじゃすまねえだろうが」

「ワン、でも、そのおかげでアリアンは少しだけサータマンを透視できたし、サータマンにセイロスがいるっていう証拠もつかめたんですよ。まったく無駄だったわけじゃないんだ」

 と犬の姿に戻ったポチが言うと、セシルがうなずきました。

「オリバンはサータマンとセイロスがミコンを攻撃すると確信した。ワルラ将軍の部隊はすでにミコンに向けて出発していたんだが、追ってミコンへ出撃するように、ゴーラントス卿の部隊にも命じたんだ」

「いよいよミコンとサータマンの間で聖戦が始まっちゃうわけ? あたいたち、それは絶対阻止したいと思ってるんだけどなぁ」

 とメールが心配そうに言うと、セシルが聞き返してきました。

「そのためにこんな場所にいたのか? シュイーゴには行かなかったのか?」

「行ったわよ。そこでグルの像が襲ってくるなんて事件があったものだから、原因を確かめにソルフ・トゥートって寺院の跡をめざしているところなの」

「セイロスはグル神を操ってるみたいなのよ。それを止めなくちゃいけないの……」

 とルルとポポロが答えます。

 セシルは、やれやれ、と頭を振りました。

「おまえたちがサータマンに深入りしているんじゃないか、というオリバンの予想は当たったな――。だが、そうなると、グーリーたちはおまえたちを見つけられなくなる。シュイーゴに行っても、おまえたちはそこにはいないわけだからな」

「妃殿下、シュイーゴはもう元の場所には存在しないのです。サータマン王の焼き討ちに遭って、すっかり焼けてしまいました。住人たちは無事なのですが、結界の中に避難しているので、普通の方法で彼らに出会うこともできません」

 と銀鼠が話します。

 

 すると、考え込んでいたフルートが口を開きました。

「今ここでグーリーやゾやヨを探しに行くことはできない。セイロスはグル神を操って何かしようと企んでいる。ミコンとの戦いと無関係じゃないだろう。一刻も早くソルフ・トゥートを見つけて、グル神がどうなっているか確かめなくちゃいけないんだ」

 重い口調でした。

「だが、あいつらはどうするつもりだ? このままサータマンをうろうろさせておくってぇのか? 危険だろうが」

 とゼンが非難するように言うと、フルートはいっそう真剣な顔になりました。

「ぼくたちと出会うほうが、もっと危険なんだよ。ゾやヨたちはきっとぼくたちについてきたがるだろう。でも、ぼくたちの行く先では、セイロスが待ち構えているかもしれないんだから」

 あ、そうか……と仲間たちは納得しました。ゾやヨやグーリーがセイロスと出会ってしまったら、闇のものの彼らは間違いなく捕まってしまうでしょう。

「あいつらの運の強さに任せるしかねえのか」

 とゼンは頭をかきむしり、メールは溜息をつきました。

「あたいたちが見つからなくて、ロムドに戻ってくれるといいんだけどなぁ」

 ルルはセシルを見ました。

「セシルはどうするの? このままグーリーたちを探し続けるつもり?」

「いや、あてがないので、とりあえずおまえたちを探していたんだ。グーリーたちが来るかもしれないと思ったからな。私はおまえたちと同行しよう。もし本当に彼らが現れたら、邪魔にならないように私が面倒を見る」

「それがいいかもしれないわ。セイロスから離れれば、支配されなくなるはずだもの……」

 とポポロが言います。

 

 フルートは座っていた地面から立ち上がりました。

「そうとなったら、さっそく出発しよう! メール、君が花で作った風の犬にセシルを乗せられるな? 全員で遺跡まで飛んでいくぞ!」

 おう! と一行も立ち上がりました。そばでうずくまっていた大狐は、弾けて五匹の小狐になると、セシルの腰の筒に戻っていきます。

「花たち、セシルはあたいの大切な友だちなんだよ。絶対落としたりしちゃダメだからね」

 とメールは花でできた風の犬に言い聞かせました。その甲斐あってか、花の犬はセシルを乗せてふわりと空に舞い上がります。

 フルートとポポロを乗せたポチ、ゼンとメールを乗せたルル、銀鼠と灰鼠の姉弟を乗せた絨毯も空に浮かびます。

「出発!」

 というフルートの号令で、一行は再び飛び始めました。目的地は森の中に沈む大寺院の遺跡です。

 西へ西へ。

 三匹の風の犬と空飛ぶ絨毯は、ジャングルのような森の中をひたすら飛んで行きました――。

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