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第19巻「天空の国の戦い」

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82.対決

 一方、フルートたちはリューラ先生の真上まで来ていました。人間の時には小柄だった先生ですが、魔王になった今は、元の何倍もの大きさになっています。

「下らん! 貴様たちに何ができるというのだ!? 魔法ひとつ使えん人間のくせに!」

 とリューラ先生はまた魔弾を繰り出してきました。同時に燃えさかる岩も上空から大量に降ってきます。

「うおっとぉ!」

 燃える隕石にはまともに当たりそうになって、ゼンが声を上げました。魔法を解除する胸当てにも、隕石は防げなかったのです。ゼンを乗せたルルが、攻撃をかわして飛び回ります。

 ポチもフルートを乗せて攻撃をかわし続けました。魔弾も隕石も雨のように降ってきますが、彼らはこんな修羅場(しゅらば)を何度もくぐり抜けてきています。

「先生の上に行け!」

 とフルートに言われて、ポチはリューラ先生の頭上へ飛びました。急降下! の命令で即座に下へ突進します。

 すると、リューラ先生が闇の障壁を張りました。広がっていく黒い光の壁に、フルートとポチが激突しそうになります。

「危ない!」

 離れた場所から見ていたレオンやポポロが、思わず叫びます。

 ところが、次の瞬間、黒い障壁はガラスのように砕けました。フルートの胸でペンダントが光って、障壁を破壊したのです。フルートの横には願い石の精霊が姿を現して、フルートの肩をつかんでいました。

「これ以上の力は危険だと言っているではないか、守護の、フルート。何故そんな無茶をする」

 と文句を言ってきます。

「ありがとう、願い石」

 とフルートは言って精霊の手を振りきり、ポチの背中を蹴って飛び下りました。落ちながらリューラ先生へ切りつけていきます。

 先生はとっさに身を引きましたが、攻撃をかわすことができませんでした。肩から胸にかけてを切り裂かれて、黒い衣と傷口が火を吹きます。

 やった! とメールたちが歓声を上げます。

 

 けれども、それは一瞬でした。次の瞬間にはリューラ先生から火が消え、黒い霧が集まってきて、傷や切れた衣を元通りにしてしまいます。

 リューラ先生は、からからと笑いました。

「無駄だ! 私に火が効くとでも思っていたのか!?」

 すると、その頭上から声がしました。

「火は効かなくても、これは効くんじゃねえのか、魔王!?」

 ゼンがルルと一緒に急降下していました。フルートに気を取られていたリューラ先生の頭を思いきり殴りつけます。

 大男になっていた先生は、倒れて地面に顔をめり込ませました。そのくらいゼンの威力はすさまじかったのです。

 うなりを上げてゼンとルルが舞い上がると、その後へポチもやってきて、フルートを地面から拾って飛び上がりました。

 その様子にマロ先生が唖然とします。

「なんということだ。魔王になったリューラを素手で殴り倒すなんて……」

「あれはゼンの得意技だよ。魔法が効かないから、魔王と素手で渡り合えるんだよね」

 とメールがちょっと笑います。

 レオンも感心して眺めていました。

「フルートが先に攻撃して、ゼンが攻撃する隙を作ったんだな。すごい息の合い方だ――。ああでも、やっぱりリューラ先生にはあまり効果がない! すぐにダメージから回復してしまう!」

 リューラ先生はすぐに地面から起き上がっていました。傷だらけになって血を流していた顔が、たちまち元に戻ってしまいます。

 マロ先生がまた言いました。

「奴に闇の竜が取り憑いている限り、どんな傷を負っても、すぐに治ってしまうだろう。闇の竜をリューラから追い出さなくてはならないんだが、ここには光が足りない。レオン一人の魔法では不可能だ。ポポロが協力できればいいんだが――」

 ポポロはたちまち泣きそうになって首を振りました。彼女は先ほど、罠を壊すのに二つ目の魔法を使ってしまったので、もう魔法は使えなかったのです。

 すると、レオンがポポロに言いました。

「透視でこの結界の出口を探してくれ。ぼくの魔法でそこを攻撃すれば、たぶん、ここを天空の国につなぐことができる。そうすれば光の力もやってくるから、きっとリューラ先生から闇の竜を追い出せるはずだ!」

「結界の連結部発見と、結界解除の呪文か――授業でやったな」

 とマロ先生はうなずき、ポポロへ言いました。

「心を落ち着かせて探すんだ。周囲で何があっても気を取られずに、ただ連結部だけを探せば、必ず結界の出口は見つかるぞ」

 マロ先生はいつの間にか教師の顔に戻っていました。生真面目そうな表情ですが、眼鏡の奥の目が温かく見つめています。ポポロはそれに勇気をもらって、はい、とうなずきました。両手を祈るように組み合わせ、目を閉じて、結界と外の世界のつなぎ目を探し始めます――。

 

 フルートとゼンは空を飛びながら話し合っていました。

「ちくしょう。やっぱりぶん殴っても傷が治るな。どうする、フルート!?」

「このまま攻撃を続行する――。あと一回だけ金の石に光ってもらうように頼んであるんだ。それが本当の限界だから、確実にあいつに光を浴びせるために、あいつの隙を誘わなくちゃいけない」

「大丈夫か? おまえも願い石の力をずいぶん金の石に流したんだろうが。体ン中をやられてるんじゃねえのか?」

 とゼンは心配しました。親友が時々苦しそうに顔を歪めていることに気づいていたのです。

「大丈夫だよ……あと一回だけなら持つ」

 とフルートは答え、ちょうどその時また痛みの発作に襲われて、顔をしかめました。おい、とゼンがあせります。 けれども、フルートはかまわずにまた上昇しました。追いかけてきたゼンへ言います。

「今度は君が先に行ってくれ。リューラ先生が障壁を張ったら頼む」

「よし」

 ゼンはルルと一緒にリューラ先生へ急降下して行きました。案の定、また黒い障壁が先生の頭上に広がります。ゼンはルルから障壁の上へ飛び下りました。まるで薄いガラス板へ下りたように、障壁がゼンの足の下で砕けていきます――。

 ポチとルルは素早く割れ目をくぐって障壁の向こうへ飛び込みました。ルルはゼンを拾い上げ、ポチはリューラ先生へ突進します。その背中ではフルートがまた炎の剣を構えていました。魔弾を避けて先生の後ろへ回り込み、背中へ切りつけます。

 一方、ゼンはルルと一緒にリューラ先生の真っ正面へ下りました。先生の顔の真ん中を、ゼンが拳で殴りつけます。

 背中と顔に同時に攻撃を食らって、リューラ先生は大きくのけぞりました。背中の火はすぐに消えますが、バランスを取り戻せなくて、仰向けに倒れていきます。

 ゼンはフルートに言いました。

「今だ、行け!」

 フルートは首のペンダントをつかんで、リューラ先生へ向けました。願い石の精霊が姿を現して自分の肩をつかんだのを確かめてから、大声で言います。

「光れ、金のい――!!」

 

 そのとたん、フルートの目の前に青い戦人形が現れました。リューラ先生の人形です。細長い手足を大きく広げて飛びかかってきます。

 フルートはとっさに体をひねってかわそうとしました。切りかかってきた人形の刃が、金の鎧にぶつかってはね返されます。

 ところが、人形のもう一本の腕は刃から人の腕に戻っていました。体勢を崩したフルートへ手を伸ばし、胸元で踊るペンダントをわしづかみにします。

 フルートが、はっとした瞬間、鎖がぶつりと音を立てて切れました。ペンダントを人形に奪い取られてしまいます。

 あわてて取り戻そうとしたフルートの目の前に、今度は赤い戦人形が現れました。両手の刃で青い戦人形の刃を受けとめます。フルートへ繰り出された攻撃を食い止めたのです。

 そのまま二体の人形は見えなくなっていきました。次の瞬間には、ずっと離れた場所に切り結ぶ二体が姿を見せ、またすぐに見えなくなってしまいます。

「金の石! 金の石!!」

 フルートは青ざめ、何もなくなった鎧の胸元を押さえて魔石を呼びました――。

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