翼を探して

朝倉 玲

Asakura, Ley

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1

 曇り空の下。俺は一人で街を歩いていた。

 梅雨が近づいてるんだなぁ……雨が降りそうだ。

 ま、俺には関係ないけどさ。

 街を大勢の人が歩いていく。男も女も、若者も年寄りも。

 幼稚園バスから降りてきた子どもが、出迎えの母親を振り切ってアパートに走っていく。母親が大声で呼び止めてる。

 ま、俺には関係ないけどね。

 この街とももうすぐお別れかぁ……。1年と3カ月。早かったような、長かったような。

 ま、それももうどうでもいいんだけどさ。

 

 そんなことを考えながら歩き続けていたら、急に後ろから服を引っ張られた。

 振り向くと、おかっぱ髪の子どもが立っていた。女の子――いや、男の子か? ちょっと見ただけじゃ、どっちか区別がつきにくい。白い服に白い半ズボンをはいて、手にはぞうさん模様の赤いバケツを持っている。

 なんだこいつ?

 すると、その子が言った。

「ねえ、お兄さん。手伝ってよ。人助け――ううん、天使助けしてくれない?」

 はぁ? 天使助け?

 俺がとまどってると、その子は赤いバケツを差し出してきた。しょうがないから俺はそれを受けとった。

 すると、その子の体が急に光り出して――

 気がつくと、もうどこにも姿が見えなくなっていた。受けとったはずのバケツも、俺の手から消えていた。

 なんだ、今の……? 夢?

 俺はぽかんと立ちつくしてしまった。

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