カエルの王子

朝倉 玲

Asakura, Ley

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 今にも泣き出しそうな曇り空。俺は黙々と歩き続ける。

 今日は塾に行く日だったけど、そんなのは無視してやった。

 実力テスト、模擬テスト、偏差値、順位、志望校合否判定……そんなのはもうどうでもいい!

 父さんがどんなに怒ったって、母さんが大泣きしたって、かまうもんか! 俺は自由になってやるんだ!

 

 俺は公園の横を通っていた。

 池でカエルが鳴いている。

 ケロケロケロケロ……あざわらうような声。

 ちっくしょう! カエルまで俺を馬鹿にする気か!?

 すると、公園の生け垣から何かがピョンと出てきた。緑色した、ちっぽけなカエル。

 いいところに来たな、チビ助。おまえをつぶしてやる!

 俺は勢いよくカエルを踏みつけた――。

 

 ところが、カエルのつぶれる感触がしなかった。逆に、ぐうっと足が押し戻されていく。

 俺が驚いてると、靴の下から声がした。

「やれやれ、八つ当たりかい? 大きな図体してみっともない。何がそんなに不満なのか知らないけどね。こっちだって、おとなしく殺されるわけにはいかないんだ。オレたちカエルの気持ち、少しは味わってみるがいいよ」

 とたんに、俺の体が墜落を始めた。

 どこへ!? 俺はただ道に立っていたのに!

 緑色が滝のように俺の横を流れていく。上へ、上へ。

 それが生け垣の色だとわかった瞬間、俺の体は地面に激突して――俺は小さなカエルになっていた。

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