水戸黄門考      べこ


 私がテレビの水戸黄門を見ていると、決まって姉が言う。
「そんなののどこがいいの?」
「・・・・・・・・・・・・。」
 私は何も答えることができない。

 確かに水戸黄門は好きだが、その理由など、自分でもよくわからないのだ。
 聞く所によると、この水戸黄門という番組は、なぜか、結構視聴率はいいらしい。

 しかし、母に言わせると、この番組を見ているのは、お年寄りが多いそうで、私の年代の人間は、おそらくほとんど見てはいないだろうということだ。(注)

 実は、私もそんな気がしている。これも母のことばでもあるのだが、わたしは、生まれてくる時代を5ー60年、間違えたのではないかと、そんな気さえする。
 なぜか私は、水戸黄門だけではなく、暴れんぼう将軍や遠山の金さんなどその種の系統のお年寄り向けの番組に強くひかれる。
水戸光圀
Illustrated by numataro
 ところで、視聴率が高いということは、そこに何らかの楽しみ、魅力があるということだろう。
 ひとつ考えられるのが、由美かおるという女優が扮するお銀の入浴シーン。しかし、それも魅力の一つになっているのは確かだが、あくまでも一部の人の楽しみにすぎないような気もする。
 それでは、視聴者の大半を占めると考えられるお年寄りにとっての魅力は何なのだろうか。
 そこのところのなぞをとけば、私にとっての水戸黄門の魅力もわかってくるような気がする。

 まず、ストーリーが単純明快で解りやすいということ。
 毎回、水戸黄門一行が、通りがかりに町の娘の危ないところを助けるところから始まる。その娘の家に滞在するうちに、やがて、役人や大商人の悪事に気が付き、証拠の品を手に入れる。そしてお決まりの、チャンバラシーンを経て、例の
「この印篭が目に入らぬか」
と言う決めぜりふにつながって行くわけである。
 毎回同じパターンの繰り返し。単純といわれればそれまでかもしれないが、先が予想できて、最後まで安心して見ていられる。
 それに、チャンバラシーンがある割には登場人物はほとんど死ぬこともなく、実に平和的でもある。

 そしてもうひとつの魅力は、徹底した勧善懲悪である。
 悪事を働く大商人や役人などははじめから、たいてい、それと解るような人相や言葉遣いで登場してくる。そこまで徹底すると、もう、気持ちが良いの一言につきてしまう。

 今度姉に聞かれたら、即座に答えよう。
「単純明快。勧善懲悪。首尾一貫。」

 でも、
「それのどこがおもしろいの?」
 姉の、さらなる突っ込みに対する答えは、まだ用意はできていない。


(注)この作品は、現在高校3年生のべこさんが、中学2年生の時にお書きになったものです。

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