「勇者フルートの冒険・3 〜謎の海の戦い〜」        

1.招集

金の石の勇者フルートが、友だちのゼンやポポロ、小犬のポチと一緒に、天空の国で魔王と戦ってから、半年が過ぎました。
その間に国には秋が来て、冬が来て、また春がやってきました。怪物も現れなかったし事件も起こらなかったったので、毎日がとても平和でした。

そんなある日のこと、フルートが裏庭で薪割りをしていると、ポチが家の中から飛び出してきました。
「ワンワン! フルート、来てください! 部屋から変な音が聞こえるんです!」
ポチは人間のことばを話す犬です。覚えているよね?
「変な音?」
フルートは斧を放り出すと、すぐにポチと一緒に家に入りました。

チリーン、チリーン・・・
鈴を鳴らすような音が、フルートの部屋から聞こえています。
フルートは、はっとしました。前にも聞いたことがある音です。
「金の石の音だ! ぼくを呼んでいるんだ!」
フルートはそう言うと、部屋に飛び込んで、机の引き出しを開けました。

引き出しの中で、鎖につけた石がキラキラ光りながら鳴っていました。
チリーン チリーン チリーン チリーン・・・
石は、前の冒険から帰ってきたとき、灰色の石ころに変わってしまいました。それが今また、金色に戻っているのです。

フルートが金の石を手に取ると、鈴のような音がぴたりと止んで、こんな声が聞こえてきました。
「フルートよ、今すぐ魔の森の泉まで来てくれ。頼みがあるのじゃ」
それは、フルートにこの金の石をくれた、泉の長老の声でした。
フルートはすぐに石に向かって答えました。
「行きます! 今すぐ参ります! 待っていてください!」
「待っておるぞ」
そう言うと、それっきり石は静かになりました。

「なにかあったのかなぁ」
ポチが、心配そうに言いました。
「わからない。でも、長老の頼みだもの、絶対に重大なことだよ」
フルートはそう言いながら、大急ぎで身支度を整えていきました。
魔法の金の鎧を身につけ、金の兜をかぶり、愛用の炎の剣とノーマルソードを背負います。魔法のダイヤモンドで強化した盾も、ベッドの下から取り出しました。それから、金の石を首から下げて、鎧の内側に大切にしまいました。
旅の道具は、いつでもすぐ持ち出せるように、リュックサックにまとめてありました。フルートは、台所から食べ物だけを持ってきて、リュックサックに詰めました。大きなパンの塊を1つと丸いチーズを3つ、リンゴを2つ。それにポチの餌になる干し肉も1袋。水筒には水を入れて、腰のベルトに結わえつけると、町へ出かけているお父さんとお母さんに手紙を書きました。

『泉の長老に呼ばれたので行ってきます。
 しばらく帰らないかもしれないけど、心配しないでください。
                      フルートより』

その手紙を台所のテーブルの上に置くと、フルートは家を出ました。小犬のポチが後からついてきます。
空は青空。とても良いお天気で、どこかでなにか悪いことが起こっているようには、とても見えませんでした。




町の外に出ると、野原の向こうの方から誰かが歩いてくるのが見えました。
背はあまり高くなくて、ちょっとずんぐりした体つき。青い胸当てと青い盾を身につけ、矢筒を背負い、片手に大きな弓を持っている、と言えば・・・そう。ドワーフの少年、ゼンです。

ゼンは、フルートとポチを見つけると、歓声を上げて駆け寄ってきました。
「ひゃっほー!! フルート、ポチ、久しぶり! ちょうど良かったぜ。これからお前んちに行くところだったんだ!」
ゼンは相変わらず元気です。フルートに飛びついてバンバン背中を叩き、ポチを抱き上げてグリグリなで回しました。

フルートとポチも、ゼンに会えて大喜び。
「どうしてここに? 君も泉の長老に呼ばれたの?」
とフルートが聞くと、ゼンはおっ、という顔をしました。
「フルートは泉の長老だったのか。俺は、これさ」
そう言ってゼンが矢筒から取り出したのは、先端から矢羽まで全部銀色の、一本の矢でした。
「これ・・・光の矢じゃないか。どうしてここに?」
とフルートは驚いて聞きました。
光の矢は、前回、魔王と戦ったとき、天空の国の王様がゼンに貸してくれたものです。闘いが終わって帰るときに、矢は王様に返してきたはずなのに・・・

「おととい俺が外で狩りをしてたらさ、こいつがいきなり天から落ちてきて、俺の目の前の地面に突き刺さったんだ。天空の国の王様がよこしたんだぜ、きっと。こりゃ何かあったな、と思ったから、フルートんとこに来れば分かるだろうと思って、急いでやってきたんだ。・・・で、何事なんだ? いったい」
「ぼくにもわからないんだ。ただ、泉の長老が、金の石を通じて、急いで泉に来いって言ってきたんだ」
「ふぅん? じゃ、とにかく、泉に行きゃいいわけか。で、泉ってのはどっちだ?」
「あそこ。あの森の一番中心にあるんだよ」
とフルートは野原の向こうに見える魔の森を指さして見せました。

そこで、2人と1匹は出発しました。
このメンバーが揃えば、怖いものなんて何もありません。
みんなは元気いっぱいで、魔の森めざして歩き出しました。


さてさて、小さな読者の強いリクエストで連載開始した「フルート3」。でも、まだ最後まで書き上がっていません。がんばって書きますけど、毎日の更新は難しいでしょう。覚悟してお付き合いくださいね〜。   By  朝倉

(2003年9月1日)



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