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第23巻「猿神グルの戦い」

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あとがき

 第23巻「猿神グルの戦い」を読んでいただいてありがとうございます。

 作者の朝倉玲です。

 

 第23巻の当初のタイトルは「サータマンの戦い」でした。

 これまで幾度となくロムド国を付け狙い、デビルドラゴンと手を組んで襲撃してきたサータマン国が舞台だったからなのですが、実際にはサータマンで信仰されている猿神グルがメインテーマの物語なので、シリーズのリニューアルに合わせてタイトルを変更しました。

 ちなみに猿神は「えんじん」ではなく「さるがみ」と読みます。訓読みに深い理由はないのですが、リズムとわかりやすさから「さるがみ」としています。

 敵へ牙をむく外向きのグルと、身内に笑顔を向ける内向きのグル。二つの顔を持つ猿神グルと、それを信じるサータマンの人々については、「フルート11・赤いドワーフの戦い」の序盤で描きましたが、今回、より深く描けて面白かったです。

 

 「フルート14」のあとがきでも書いたとおり、現代のファンタジー作品は、世界各地に伝わってきた昔話や神話や伝説をミックスして生み出されてきたものです。

 それは有名な怪物の出身地を考えてみれば一目瞭然で、スフィンクスはエジプト、ドラゴンはヨーロッパ(特にキリスト教の下で悪魔と同一視された)、グリフィンはギリシャ、ゾンビはアフリカ、ヤマタノオロチはもちろん日本。でも、それらが出身地に関係なく、ひとつのファンタジー小説やゲームの中に次々登場してきます。

 現在のこのファンタジーブームは、世界のグローバル化が生み出したもののひとつなんだなぁ、とつくづく思います。

 

 「フルート」もそんなファンタジー小説のひとつです。

 世の中にファンタジー作品は山のようにあるし、同じような怪物が登場して、同じような展開をする物語もごまんとあります。

 でも、実は私はそれをあまり気にしていません。だって、ファンタジーのベースは、子どもの頃から親しんできた昔話や神話や伝説なのですから。もっとさかのぼれば、ファンタジーの始まりは、大昔に誰かが別の場所から運んできた言い伝えです。似ていてあたりまえ。材料は同じなんです。

 ただ、その素材をどう組み立てて、どんな物語にしていくか。そこは作者によって違うところだし、そこでどんなキャラクターたちが活躍するかで、ストーリーもテーマもがらりと変わってしまいます。ファンタジー作品がこんなにたくさんあっても、いまだに多くの人がファンタジーに惹きつけられているのは、それが理由なんじゃないかな、なんて思っています。

 

 さて、今回の「猿神グルの戦い」はこんな物語でした。いかがだったでしょうか? 楽しんでいただけたら嬉しいのですが。

 次の作品は、外伝を省略して、「フルート24・パルバンの戦い」になります。

2020年4月23日

朝倉玲のサイン
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