第17巻「マモリワスレの戦い」を読んでいただいてありがとうございます。
作者の朝倉玲です。
今回フルートは敵の罠にかかって、金の石の勇者の記憶を失ってしまいます。守りの勇者が守ることをわすれるマモリワスレの術です。
仲間たちが大きなショックを受けるのは当然ですが、金の石の勇者がいなくなったことで、中央大陸の国々が大きく動き始め、急激に戦いへと向かっていきます。
「そんなものすごい状況を、このかわいらしい坊や一人が引き起こしただなんてね」とセイマの居酒屋でイリーヌが言いますが、それは作者自身の実感だったりします。
私も、フルートに劣らず平和主義のつもりなんですけれどねぇ。書く作品がいつの間にかチャンチャンバラバラになっていってしまうのは、ほんと、何故なんでしょう……?
今回も物語の設定の裏話を少し。
最初にフルートたちが訪れた塩湖のトー湖ですが、モデルはボリビアのウユニ塩湖です。最近、日本の観光客にも人気のスポットなので、ぴんと来た方は多かったと思います。
そこで子どもたちが遊んでいたのは、いわゆる「通りゃんせ」なのですが、本当に世界中にこれと似たような遊びがあります。一番有名なのは、イギリスの「ロンドン橋落ちた」ですね。そこから想像を膨らませて、フルートたちの世界にも様々な場所に同じような遊びがある、と語らせました。
また、今回も大砂漠が出てきます。前回の「フルート7・黄泉の国の戦い」で描ききれなかったスコールや、その後の花畑などを描けたので、作者としては満足でした。
砂漠に関する情報はネットなどからも集めましたが、『科学アルバム 砂漠の世界』(片平孝著/あかね書房)という児童向け書籍が、とても参考になりました。砂漠は厳しいけれど死の世界などではないことが、よくわかります。
現実の世界を知ることで、フルートたちの世界が広がり、フルートたちの世界を描くことで、現実の世界への理解が深まります。自然や地形のことだけでなく、政治経済、文化、歴史、神話、エトセトラ……「フルート」を通じて改めて考えて学んだことは多いです。
私にとって「フルート」はそんな物語だったりもします。
今回も一緒にお楽しみいただけたのなら嬉しいです。
2020年4月7日