「勇者フルートの冒険」シリーズのタイトルロゴ

第16巻「賢者たちの戦い」

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あとがき

 第16巻「賢者たちの戦い」を読んでいただいてありがとうございます。

 作者の朝倉玲です。

 

 「フルート」シリーズは、はらはらドキドキ、アクション性も強いのですが、この作品はその中でもひときわアクティブなストーリーだったのではないかと思います。

 テト国のアキリー女王が、謎の夢解きを賢王と名高いロムド王に質問にくる場面から始まって、女王とフルートとオリバンたちが、アクション、アクション、またアクション。とにかく動き回ります。

 そして、今回もまたフルートは命の危機に陥ります。ポポロたちはそれを守ろうと必死になりますが、フルートは女王を守るために自分から危険に飛び込んでいって……とまあ、相変わらずのフルートです。仲間たちがいなかったら、フルートは間違いなく五十回は死んでいますね。いや、五十回じゃきかないかな。仲間たちの苦労が思いやられます。

 

 さて、今回の舞台になったテト国の設定について。

 読んでお気づきの方もあるのではないかと思うのですが、テト国のモデルはトルコです。ただ、地図上の位置は一致してはいません。地形もあまり合っていません。ただ、文化や言語、服装や雰囲気のようなものをトルコに倣いました。トルコ料理は大変美味しいと聞いています。食べてみたいなぁ、という憧れを込めて、テト国での食事シーンを描きました。

 そして、テト国はテト川とガウス川という2つの大河が流れる川の国です。人々は川を利用しながら、川と共に生きています。

 私が実際に住んでいる福島県伊達市も、川と共に発展してきた場所です。こちらは阿武隈川で、かつては水運で栄え、昔からたびたび水害に見舞われてきました。住人に益も災厄も与えてくれる川は、なじみ深い存在です。

 今回、川の上での戦闘シーンやアクションシーンをたくさん描けたので、とても楽しかったです。

 ファンタジーは架空の世界が舞台なので、現実の世界は無関係のように思われることが多いのですが、架空だからこそ、リアリティを与えるために、現実の国や町、自分が住んでいる場所などをよく知って、物語の中に再現する力が要求されるのではないかと思っています。

 川の国テトでフルートたちが繰り広げる冒険譚。お楽しみいただけたら幸いです。

 

 余談ですが、このシリーズが完結したのは2011年3月8日でした。その3日後にあの東日本大震災がやって来ました。福島県伊達市は震度6弱の揺れに見舞われたのですが、我が家は地盤の弱い地域に建っていたようで、実際の揺れは震度6強くらいありました。

 幸い人的な被害はなかったし、原発事故からの避難地域にも当たりませんでしたが、我が家はかなり傷み、部屋の中も足の踏み場がないほどめちゃくちゃになって、しばらくは小説どころでなくなりました。インターネットも2週間以上使えなくなったので、片付けをしながら「フルート16が完結していて良かった」と本気で思ったものです。

 次の外伝16「希望」は、本来は書く予定ではなかった作品です。

 震災を経て生まれてきた物語なので、併せてお読みいただけたら嬉しいです。

2020年4月3日

朝倉玲のサイン
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