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第14巻「竜の棲む国の戦い」

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あとがき

 第14巻「竜の棲む国の戦い」を読んでいただいてありがとうございます。

 作者の朝倉玲です。

 

 今回の物語は、中央大陸の東に位置する大国ユラサイが舞台です。

 読んですぐおわかりと思いますが、モデルは中国です。もちろんファンタジーの世界なので、いろいろ変えてあります。

 例えばユラサイには「飛竜」という前足がない竜がいて、ユラサイの王族貴族の乗り物にされています。前足のない竜というのは、つまりワイバーンで、本来はヨーロッパで考えられた竜なのですが、「フルート」の世界では、闇の竜と戦うためにユラサイで生み出されたということになっています。

 「フルート」に限らず、およそ最近のファンタジーでは、世界中の怪物や伝説がミックスされ、新たな架空世界の上に展開されています。ただ、これは最近初めて起きた現象ではなく、大昔から、人間が地域を越えて交流するようになったときに、必ず起きてきた現象です。よそから来た人間が、自分の地域の昔話や伝説を旅先で語り、それがその地域に根ざして、人々の間で語られるようになったのですね。これを民話学では「伝播(でんぱ)」と言います。だから、世界中の昔話や伝説を調べると、驚くくらい似た話が遠く離れた場所で見つかったりします。

 今は交通や情報網の発達によって、世界中の出来事がいっそう簡単にわかるようになりました。その結果、遠い外国で語られてきた昔話に触れる機会が増え、世界中の怪物がごちゃ混ぜに登場する新しい物語が生まれてきたのだろうと思います。

 ファンタジーの隆盛はグローバル化する社会から必然的に生み出された、「新しい昔話」なのですね。

 

 さて、今回の物語でスポットが当たるのはポチとルルです。そこに竜子帝とリンメイという二人も加わって、あんな事件こんな事件。今回もまたはらはらしていただけたのではないでしょうか。

 ついでに、誰かさんのわがままぶりにもイライラさせられたのでは? そういうキャラにするつもりで書いたのですが、予想以上のお坊ちゃまぶりに、作者自身がイライラさせられてしまいました。(笑)

 なお、物語には「食魔」という怪物が登場します。これは伝説や昔話に登場する怪物ではなく、以前交流があった物書きさんのオリジナルの魔物を、許可を得て使わせていただいたものです。

 当初の設定では「喰魔」と書いて「しょくま」と読む、と言うことだったのですが、「喰」の文字は日本生まれの国字で「しょく」とは読まないことが後からわかったので、今回「喰魔」はすべて「食魔」としました。

 漢字表記はどうであれ、なかなか強い魔物です。

 「竜の棲む国の戦い」の物語、お楽しみいただけたなら嬉しいです。

2020年3月31日

朝倉玲のサイン
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