第11巻「赤いドワーフの戦い」を読んでいただいてありがとうございます。
作者の朝倉玲です。
今回の物語では、タイトルにもあるとおり、ドワーフたちが活躍します。オープニングは、ロムド皇太子のオリバンや深緑の魔法使いに守られながら、ドワーフの移住団がジタン山脈を目指すシーンです。
「フルート」の物語は典型的なトールキン型ファンタジーなので、ドワーフもそのイメージに沿っています。世の中の大半のファンタジーがトールキンの「指輪物語」から派生しているので、ごく一般的なイメージのドワーフと言えるかもしれません。
また、この物語には同じこびとのノームも登場します。こちらもトールキン型ですが、「背が低く、地中に暮らし、鉱物を採取して細工するのが得意」という設定はどちらにも共通しています。
本来のドワーフはドイツなどのゲルマン系の伝承、ノームは語源がギリシャ語なので、伝承としてはラテン系になるでしょうか。それぞれ語られていた地域が別なので、トールキンが「指輪物語」に一緒に登場させるまで、「どっちもこびとで似てるけど、どこがどんなふうに違うんだろう?」なんて疑問に思う人はいなかったのです。
たぶん、この世界に人間に似て人間でないものがいるという想像は、全世界で考えられてきたことなんだろうと思います。でも、そういう人たちを生活の中で見かけることはない。その理由を考えるうちに、彼らは小さい上に地面の中を生活の場にしているから、自分たちの目に触れないのだ、と考えついたのでしょうね。
地域の違いを超えて、人間が共通して想像する亜人だったのだと思います。
「フルート」の物語では、共通点が多いドワーフとノームを、元は同じ一族から発生した兄弟のような種族としました。物語の中で、ノームはドワーフを毛嫌いしていますが、これも「フルート」のオリジナル設定です。
その一方で、ジタン山脈を巡る攻防も巻き起こります。ロムド城があるディーラもかなり危険な状況に陥ります。
フルートたちが世界へ飛び出しているだけに、戦闘も大がかりになってきました。
次第に壮大になっていく物語を、わくわく(はらはら?)と楽しんでいただければ嬉しいです。
2020年3月24日