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外伝21「集合」

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6.光

 「勇者たちはディーラから闇の灰を消滅させてくれたか――。ザカラスでの報告を聞いて、同じ方法で都から闇を消せないだろうか、と考えてはいたのだが、そなたたち自身の判断で早々に行ってくれたのだな。実にありがたいことだ。感謝する」

 王の執務室で、ロムド王は勇者の一行に向かってそう言いました。大国の王であっても、感謝するべき相手には率直に感謝を伝えます。

 いえ、ぼくたちは別に……とフルートは顔を赤らめました。誉められたり感謝されたりするためにやったことではないので、改まって礼を言われると、嬉しいのですが照れくさい気持ちになります。

 すると、一緒に執務室にいた白の魔法使いが言いました。

「勇者殿たちが考え出された方法は、広範囲の闇の灰を消滅させるのに大変有効です。大地の雪がまだ溶け出さないうちに、魔法軍団を各方面に派遣して、雪を聖水に変え、闇の灰や怪物を消去させることにいたします」

「うむ、よろしく頼む。勇者殿たちにこれ以上の灰退治を頼むことはできない。それは我々の仕事なのだ」

 とロムド王が言ったので、フルートたちは今度はとまどいました。明日になってポポロの魔法が回復したら、空を飛んで、ロムドの他の街や村からも雪と闇の灰を消し去ろうと考えていたからです。

 

 そんな彼らに、同席していたゴーリスが言いました。

「おまえらの役目は別にある――。昨日、間もなく大陸で大きな戦いが始まる、とユギル殿が言った。それがいつどこで始まるのかについては、今もユギル殿が占っている最中だがな。おまえたちは、戦いに備えて、城で待機しているんだ」

 フルートたちはいっせいに真剣な表情になりました。大陸で大きな戦いを始めるのは、あのセイロスに違いありません。

 リーンズ宰相も言いました。

「ワルラ将軍は、すでに三個師団を入城させて、戦闘開始に備えています。皇太子殿下はユラサイの皇帝に当てて、現状報告と出兵要請の書状を執筆中。ザカラス王やエスタ王からも、早急に会談を行いたい、という申込みが来ております」

 ロムド王はうなずいて言いました。

「テトの女王やメイ女王にも会談に参加するよう呼びかけてみよう。闇が軍勢となって襲ってきたとき、世界を守る盾となるのは、中央大陸のこの国々だ。我らが力と心を合わせて対抗すれば、必ず闇に討ち勝つことができるだろう」

 王の家臣たちは、いっせいに、はい、と答えました。さっそく宰相とゴーリスは会談の手はずを整えに、白の魔法使いは闇の灰を消す命令を伝えに出ていって、執務室にはロムド王と勇者の一行だけが残ります。

 

 すると、ロムド王がフルートたちに向かって言いました。

「間もなく、このロムド城に同盟国の王たちが集まってくることだろう。これから先、我が国が同盟の中心になっていくのだ。そうなれば、我が国は敵から狙われるようになる。城と都は四大魔法使いを長とする魔法軍団に守られているが、おそらくそれだけでは守りが足りなくなるだろう。勇者たちにはこの先も城に留まってもらいたいのだ。そして、我々と共に戦ってほしい」

 王は真剣でした。フルートたちはまだ十五、六の若造だというのに、大人に対するように語りかけてきます。

 フルートは少しの間考え込み、また顔を上げて言いました。

「ぼくは願い石を持っているために、闇の怪物からしばしば狙われます。だから、打ち合わせがすんだら、ぼくたちはこの城から出て行くのがいいんじゃないか、と考えていました――。でも、陛下のおっしゃるとおり、ロムドは同盟軍の要(かなめ)になる国です。この国が敵に敗れるようなことがあれば、同盟もなし崩しにされるでしょう。そんなことは絶対にさせられません。ぼくたちはこの城と国を守って、必ずセイロスの野望を阻止します。これまで出会ってきた、大勢の仲間たちと一緒に」

 そう言って、フルートは王の前で片膝をつき、胸に右手を当てて見せました。その横でゼンは腕組みしてうなずき、メールは優美な海のお辞儀をし、ポポロは衣の裾をつまんで膝を曲げ、犬たちもそれぞれに頭を下げました。全員がロムドのために戦うことを王に誓ったのです。

「頼もしいことだ。よろしく頼むぞ」

 とロムド王は言い、視線を上に向けました。天井にさえぎられて、その先は見えませんが、城の上には青空が広がっているはずでした。久しぶりの日ざしも、あふれんばかりに地上に降りそそいでいるはずです。それはフルートたちが都にもたらしてくれたものでした。

「我らは光と共にあるな」

 とロムド王がつぶやきます。

 

 城の外からは、ヒバリのさえずりがかすかに聞こえていました――。

The End

(2013年8月16日初稿/2020年4月14日最終修正)

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