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外伝13「ヒムカシの国」

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あとがき

 外伝13作「ヒムカシの国」を読んでいただいてありがとうございます。

 作者の朝倉玲です。

 

 基本的に外伝にあとがきは付けないのですが、この「ヒムカシの国」については、ちょっと解説(言い訳?)させていただきます。

 

 「フルート」シリーズの初期からの読者に、ハカセ君というお子さんがいます。今はもう成人してしまいましたが、まだ小学生だった頃、「フルート」を読みながら「妖怪がたくさん出てくる話も書いてほしい」とお母さんを通じてリクエストしてくれました。

 妖怪は魅力的で、同時にものすごく難しいお題でした。

 何故なら、妖怪には研究家と言えるほど熱心なファンが大勢いるし、日本の怪物なので、外国の怪物よりよく知られていたりするからです。「ゲゲゲの鬼太郎」のような国民的に有名な妖怪漫画もあります。「ヒムカシの国」ではいろいろな妖怪を登場させましたが、「この妖怪はこんなものではない!」とダメ出しを連発されそうで、ひやひやしながら書いていました。

 そして、なんといってもページ数が足りませんでした。

 本編にするか外伝にするかで迷って、結局外伝にしたのですが、本編として書いてもおかしくないだけのネタがいろいろありました。結果、少々詰め込みすぎになってしまった気が……。

 今は外伝として公開していますが、将来、本編に書き直すかもしれない作品です。

 

 おまけとして、この物語の裏話や設定を少し載せておきます。

 まず、国の名前にもなっている「ヒムカシ」とは、「東」を意味する日本の古語から来ています。「ヒムカシ」→「ヒンカシ」→「ヒンガシ」→「ヒガシ」と変化していったようです。つまり、ヒムカシは東の国。太陽が昇る東にある国「日本」がモデルなのは、ご承知の通りです。

 オシラは柳田国男の「遠野物語」などで有名な妖怪であり神ですが、馬神・姫神の夫婦として描かれる場合も、女性だけで描かれる場合もあります。

 オシラというのは実は絹糸を作る「蚕(かいこ)」のことで、蚕の頭部が馬に似ているので馬神、絹糸で機を織るのは女性が多いので、機織り上手の姫神と夫婦ということになった、という説があります。この物語はそのあたりを下敷きにしています。

 天狗は山にこもって修行していた山伏がモデルだとも、海を渡って日本に流れ着き、山で暮らすようになった外国人がモデルだとも言われています。大柄で鼻が高くて赤ら顔、という天狗の姿は、確かに西洋人をイメージさせます。

 「フルート」の世界では、オシラや天狗はエルフの末裔で、とある理由から姿が変わってしまった。でも、エルフとしての契約の下にあるので、直接人間の世界に関われなくて、フルートたちに助けを求めた──ということになっています。

 

 ヒロイックファンタジーの世界は14~15世紀のヨーロッパを下敷きに描かれることが多くて、「フルート」の世界もそうなのですが、その時代の日本は? というと、ちょうど室町時代、南北朝時代やその後の戦国時代に当たっています。戦乱の時代ですね。

 そのあたりも考えに入れて書いた「ヒムカシの国」ですが、やっぱり圧倒的にページ数が足りなかったので、「フルート」シリーズが完結したら、再構成して書き直すかもしれません。本当に。

 ハカセ君、妖怪の世界は奥が深かったです……。

2020年3月30日

朝倉玲のサイン
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