「こくっぱ家訪問記」
byオズまじょ


 気がつくと、そこは山の中だった。
周りの木立が深まり、道がどんどん細くなっている。不安に思いながら前に進み続けていたのであるが、やはり私達は道に迷ったらしい・・・。

こくっぱ家の前の風景

 あるお盆休みの事であった。夫の実家への帰省途中に、敬愛なる「こくっぱ家」を訪ねる計画を立てたのだった。事前に、こくっぱの母様から詳細な地図を送っていただき、意気揚揚と自宅を出発した。
高速道路を走り出して1時間後、早くもトラブル発生!事故渋滞に巻き込まれた。
予定が遅れることを電話すると、電話口からとてもきれいなソプラノボイスが聞こえてきた。
こくっぱの母様だ!初めて直接話しをさせてもらって感激した。遅れることを詫び、車は目的地にのろのろと進んでいった。

 ようやく高速道路を降り、坂をぐねぐね登って行くと、ハカセ君達の小学校らしき建物が見えてきた。もう近くまで着たのだ。再度電話連絡をして家を尋ねると「その道を進むと田舎らしくない家が建ってますので・・・」との説明。そこで、こくっぱ家を目指して走っていたところ、山の中に突入したのであった。
幼少のこくっぱ君が多動まっさかりの時によく「山狩り」をしたそうだが、よくこんな山の中で見つかったものだと心底思いつつ、車を反対方向に走らせると、1台の車がやってきてくれた。中にはメガネをかけた男の方とお嬢さん2人が乗っていた。
「オズまじょさんですか?はははー」とにこやかに声をかけてくれたのは、こくっぱの父様。私達を迎えにきてくれた車の後をついて、ようやくこくっぱ家にたどり着いたのであった。


みんなの写真 こくっぱ家は急斜面の上に建った、2件の大きな家であった。昔ながらの母屋と真新しい白くきれいな家が連なっている。なるほど、「田舎らしくない」家だ・・・。
家族の皆さんと挨拶をしている間に、かかしが行方不明・・・。こくっぱの母様の「もうあがっちゃってますよ♪」のお言葉どおり、裏口から子供部屋に入り、早速おもちゃで遊んでいた。普通の家なら恐縮ものだが、ここはこくっぱ家、かかしの様な行動は見慣れているという、妙な安心感がある。
大人とドロシーは吹き抜けの明るい玄関から上がらせてもらい、続いた和室の仏間でスイカとお茶(こくっぱオリジナルブレンド茶)をいただいた。
ここで、こくっぱ君とハカセ君にも初対面したのであるが、ももちゃんも併せ3人同じような背丈なので見分けがつかない。家ではもちろん「○○ちゃん」と名前で呼ばれており、それも混乱の原因であった。

 隣には広い子供部屋があり、机が何個もならんでいる。TVゲームのソフトもいっぱいだ。
「こんにちはー、あそぼー」と声をかけられ夫はハカセ君とTVゲームを始めた。
(・・・彼は帰るまで遊びに付き合わされるのであった・・・)
ももちゃんはおしゃまな女の子で、ドロシーにアクセサリーを触らせてくれ、かわいがってくれていた。
ののちゃんは小学生にしては大きな(昔の自分を思い出すわ)女の子であるが、みんなの良いお姉ちゃんでしっかりしたいい子だなと感じた。(後に夫も褒めていました)
こくっぱ君はパソコンを立ち上げて、五味太郎さんの「ことばの図鑑」の実演を始めた。
「まれなしっぱい」という、オーケストラを指揮中の指揮者のズボンが下にずり落ちて、ギャッと驚く画像があるのだが、こくっぱ君は勉強イスの上に乗り、ズボンを下げて何度も熱演してくれた。(ホント上手、面白いです・・・)
日常会話には支障があるのだが、専用のカメラで撮った画面をパソコンに取り込んだり、そういう複雑な事は出来るらしい。つくづく、発達のアンバランスな障害だなと実感した。


FF7のクラウドになり切っているこくっぱ君 御家族に了承を得てデジタルビデオを撮らせてもらおうとした時、こくっぱ君に「僕に撮らせて〜」とビデオカメラを持っていかれてしまった。慌ててこくっぱの母様が取り返してくれたのだが、小パニックになる。
「あーあー○○ちゃん(こくっぱ君のこと)だめなんだよ〜カメラ見せちゃ」とハカセくんの声がした。特定の物にこだわる気持ちは良く分かる。かかしも触ったらいけないものでも見たら触りたくなる、その気持ちは当然だ。しまっておかない大人の方が悪い。
ごめんね、こくっぱ君。ビデオカメラを出さなければ良かったね。

 かかしは黙々と電車のおもちゃを動かし、車輪を横から眺めていたが、ここには2人のうわてがいる。こくっぱ君達も敷居の上で電車を動かして車輪を見ているのであった。
オムツがなかなか取れ無いかかしと違い、こくっぱ君のトイレトレーニングはあっさり完了したそうだ。というのも濡れた感触が相当不快らしい、服が少し濡れても脱ぐそうだ。感覚が過敏なおかげでお漏らしが無いのは良いが、日に数度も着替えが必要になる。ただでも総勢10人という大家族、洗濯物も凄い量になるに違いない。
「裏にたーくさん干しているんです〜、見られます?」とこくっぱの母様がおっしゃってくださったが、そんな恐ろしい光景をとても見る勇気など無かった。


 かくれんぼが始まったらしく、夫が少々恥らいながら隠れにやってきた。
夫は(私が褒めるのもナンだが)子供とのつきあいにとても根気があって、いとこの子供達にも大変なつかれている。かかしの障害の事も専門的な話は知ろうともしないが、心の底で受け止め、とても可愛がっている。きっとかかしにとっても良いパパだと思う。
夫はすっかりハカセ君に友達と思われたようだった。
(ちなみに夫はハカセくんの障害が分からなかったそうだ。ちょっと人懐っこい子くらいに感じていたらしい。・・・分かってもらえないところが問題なのだよね、きっと)
障害のある子を持つ家庭は、ややもすれば暗くなりがちなのだが、この家にはそんな雰囲気は微塵も無い、超個性的な子供達を中心に騒動と笑いが絶えない。まさにHPどおりの豪快な家庭であった。そして、子供達の騒々しさ(失礼!)に圧倒され、一人っ子で核家族だった私は頭がクラクラ、目がチカチカしてくるのであった。

 子供部屋の続きに広いダイニングルームがあり、長方形の大きなちゃぶ台が置かれていた。ここでメロンを食べながら、こくっぱの母様、父様とも色々お話させていただいた。どちらもメガネの奥にきれいな大きな目をしており、こくっぱ君達も良く似ている。
確かに、彼らには発達の問題はあるのだと思うが、都会でもこんなに目がキラキラした子は見る事が無い。彼らの目は好奇心や身近なものへの驚きでキラキラ、キラキラ輝いている。 本当に素敵な子供達なのだ。 個性を尊重し、こんな風に伸び伸びと育てられた、こくっぱ家の大人の方々はやっぱりすごいなと改めて思った。そして、これからも世間の不用意な大人の発言でこの輝きが失われることが無いことを祈った。


 すっかりお騒がせをした後、こくっぱ家を退去し、おじいちゃんのお餅屋さんに向かった。
道中でこくっぱ君が車から腕を出してピストルを撃つ格好をしていたが、あれはきっとルパンのまねだろう。見せてもらえてラッキーだった。
お餅屋さんは商品の置いたお店の続きに作業場があり、おじいちゃんとおばあちゃんが出てきてくれた。ここのお餅は米から自家製で、真心がこもっている。ひょんな縁から、我が家も米を送って頂いているのだが、今まで購入した米と比べ物にならないくらい美味しい。利潤を追求して大量の農薬を使用し、ブレンドしている市販米と、飲めるほど清らかな水が流れ込む山上の田んぼで必要最小限の農薬しか使用せず、手間をかけて育て上げられた米の違いは歴然としている。
かかしは早速、お店の方をウロウロし、商品を触ろうとし始めた。止めようとすると、おじいちゃんの声がした。「よいよい、全部見れば気がすむ。」
かかしが手に取った商品を1つ下さった。かかしもにっこり、おとなしくなる。
さすがこくっぱ家のおじいちゃん、良く分かってらっしゃる。やさしい目をしたおじいちゃんにはネットでのファンが大勢いると思うが、本当に素敵な方だった。
お土産に「柏餅」をたくさん頂いて、こくっぱ一族とお別れをし、車は夫の実家に向かって走っていった。・・・その晩、オズまじょ一家が早く就寝したのは言うまでも無い・・・。

<終わり>

P.S.今回は短時間の滞在でしたが、次回はぜひサマーキャンプをさせていただきたいと思っております。こくっぱ家の皆様よろしくね。


  【おまけのアルバム】  


カメラを向けると、こんな顔になる「ハカセ」

2才の頃、すでに自力でで食料を調達していた「ののちゃん」


カボチャより小さかった「ももちゃん」<うそ



(コメントbyこくっぱの母さん)
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