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第1巻「黒い霧の沼の戦い」

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あとがき

 第1巻「黒い霧の沼の戦い」を読んでいただいてありがとうございます。

 作者の朝倉玲です。

 

 第1巻と言っても、実際にはシリーズ2作目になります。この物語は当時小学1年生だった息子の寝物語に語ったお話で、オープニング部分を独立させて「始まりの物語」に、本編を第1巻としたものです。このため「始まりの物語」は「フルート0」、第1巻は「フルート1」と呼ばれています。

 寝物語のときには、これで完結という気持ちがあったので、エンディングもなんとなくそんな雰囲気になっていますが、実際にはここからが冒険物語の本番です。

 子どもたちの成長と共に、物語もどんどん広がっていきます──。

 

 ところで、この第1巻を読んで「チートだなぁ」と思った方がいらっしゃったと思います。

 わずか11歳の少年が勇者になって闇と戦うわけですが、さっそく強力な魔法の武器や防具は出てくるわ、頼もしい仲間は現れるわ。

 いえ、作者の私もはじめは「安易な設定だなぁ」と思っていました。序盤から、怪我や病気をたちまち治す魔石とか、あらゆる攻撃や暑さ寒さを防ぐ鎧とか、ものすごい炎の力を持つ魔剣なんかが登場するんですからね。仲間たちも特殊能力高いし。ゲームなら「ゲームバランスが悪い!」と叱られるところです。はい、よくわかっております。

 

 最初にも書いたとおり、元々これは息子のために作ったお話でした。登場する人やアイテムにも、息子のリクエストがずいぶん取り入れられています。彼は基本的に「びびり屋さん」なので、主人公たちが危なくなるのが怖くて、敵に絶対負けないような強力な武器や防具を、冒険の序盤から要求してきたわけです。

 それを本格的ファンタジーとして書き直すときに、悩みました。

 セオリー通り、強力なアイテムはもっと後になってから手に入るようにしたほうがいいんじゃないかな。しばらくは普通のロングソードと自分の力だけで戦っていって、少しずつスキルアップしていくストーリーにしようかな……。

 でも、それはそれで、なんだかありきたりのような気がして、あれこれ悩むうちに、ふと思いつきました。

 そうだ! アイテムや仲間が強力なら、敵や戦いをそれを上回るくらい大変にしてしまえばいいんじゃない? ものすごい強敵が登場したり、フルートが自分からすごく危険な状況に飛び込んでいけば、強さのバランスも取れるよね……!

 というわけで、この物語は主人公がいつも絶体絶命の危機に陥る、はらはらどきどきのストーリーになりました。読者から「ジェットコースターのような物語だ」と言われたこともあります。……そうかも。

 

 今回、サイトをリニューアルするに当たって、第1巻全体に修正を行いました。ストーリーそのものは変わっていませんが、書いた当時には力不足で入れられなかった描写なども、ちょこちょこ加わっていたりします。

 今回初めて読む方にも、久しぶりで読み返す方にも、読みやすくなっているといいな、と思っています。

2020年3月10日

朝倉玲のサイン
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